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葬儀が滞りなく終わった。
愛子は、広江の家で、母百合が送った手紙を読んでいた。
その手紙には、愛子の事ばかり書かれていた。
愛子が初めて立って歩いた時の事、お喋りが出来るようになった事、幼稚園に入園、卒園した事、小学校に入学して、水泳大会で優勝した事、運動会での愛子の様子、中学入学した事、細かく手紙に書かれていた。
そして、最後の手紙は、あの震災の1週間前に送られていた。
″おばあちゃん、お元気ですか?私達家族はとても元気にしています。この前、水泳の県大会で愛子が優勝しました。あの子は本当に泳ぐ事が大好きなようです。だけど、勉強はちょっと苦手なようです。沢山の時間をかけても、水泳の様にできないと泣いてしまったりしています。だけどね、愛子は引っ込み思案だけど、とても優しい思いやりのある子に育ちました。だから友達や先生、ご近所さん、皆に愛されています。勉強より、それが一番大切ですよね。
おばあちゃんがお母さんを沢山愛して、その愛情を私も受ける事ができました。だから、私も同じように、いいえ、もっともっと愛子を愛していきたいと思います。″
愛子は、この手紙を読んでただ、涙が溢れて止まらなかった。
愛子は曾お祖母さんから祖母へ、祖母から母へ、そしてその愛と命は愛子にバトンされていたのだと、繋がっていたのだと知った。
なのに、愛子は全てに絶望したがために、危うくこの愛と命のバトンを途切れさす所だったのだ。
自分の命は、自分のものだけでないと改めて思えたのだ。
「私は二度と、死にたいなんて言わないよ。ちゃんと自分の生きる道をしっかり歩んで行きます。どうか見守っていて下さい。」
愛子は、仏壇の前で手を合わせた。
愛子が広江の家を出ると、一輝が待っていた。
「愛子、帰ろう?」
「うん。」
一輝が自然と愛子の手を取る。広江が好きだったという街を見下ろしながらゆっくり歩く。
そして、一輝の家の前に着いた時だった。
「愛子、俺愛子が好きだ。ずっと傍にいたい。」
愛子は、一輝の告白に驚いた。
「愛子の気持ちは今すぐには聞かない。ただ、俺が思っている事を知ってほしいと思った。」
一輝は、愛子を抱きしめる。
「好きだよ。」
耳元で、そう囁いて、家に入って行った。
愛子は顔を赤く染める。胸の鼓動が止まらない。
頭の中が一輝でいっぱいになっている。
もっと手を繋いでいたい、傍にいたい、抱きしめてほしい。色々な思いが溢れていく。
これが、広江さんが言っていた、好きだという感情?
そうか、私も一輝の事をいつの間にか好きになっていたんだ。
でも、風香の事が頭をよぎる。風香の思いが一輝に届くように応援すると。
でも、もう応援できないーーーー。
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