第三章

16/21
前へ
/81ページ
次へ
「風香!!!」 風香の後ろにいつの間にか唯斗が立っていた。そして、風香を唯斗の方に振り向かす。 「愛子になんて事言ってんだ!愛子が居なければよかったとか消えろとか!何て酷いこと言ってるんだよ。いつものお前らしくない!」 風香は泣きじゃくりながら、唯斗の胸を両手を握りしめて、力いっぱい叩く。 「だって本当のことじゃない!愛子が広江さんを殺して、一輝も私から奪おうとするんだもん!酷いよ!酷すぎるよ!!!それになによ!私らしいって!私はそんなに出来た人間じゃないわよ!!!」 唯斗は、風香を力いっぱい抱きしめる。 「愛子が広江さんを殺すわけないじゃん。それに、一輝の事も。ただ、お互いがお互いを好きになっちゃったんだから仕方ないだろ?理屈じゃないって分かるだろ?幼稚園から一輝を好きなのは知ってる。悔しくて辛いのは分かるけど、だからといって、言っていい事と悪い事がある!風香だって本当は分かってるだろ?」 「分かってるわよ!酷いこと言ってしまったこと!でも、私がどれだけ一輝を思ってたか、唯斗に分かるはずがない!!」 唯斗は、風香の身体を少し離し、風香が今まで見た事がない真面目な顔をしている。 「分かるよ。」 唯斗の初めてみる表情に風香は、ドキンと胸の鼓動が鳴る。 唯斗は、風香の身体を抱きしめながら、風香にキスをした。 しかもそのキスは優しい物ではない。風香の唇を貪るような激しいものだった。 暫くして、唯斗は風香の唇を離す。 「俺は幼稚園からずっと、お前が考えている以上にお前の事が好きなんだよ。」 そして、また風香にキスをした。今度は優しく、風香に思いが届くようにと。 風香は、それを受け入れるかのように、目を閉じて唯斗を抱き締め返した。 長い長いキスをした後、唯斗はまだ風香と離れたくなくて、唯斗の家に風香を招き入れた。 家族は、出かけていて誰もいなかった。 風香が唯斗の部屋に入るのは随分昔の様に思う。 唯斗は、風香を後ろから抱きしめる。 風香は、唯斗の方に顔を向けようとした。 唯斗は、やはり先程より真面目、いや、"男の顔"をして、風香の唇を塞ぐ。風香の身体が完全に唯斗を向いて、両腕を唯斗の首に回し唯斗のキスを受け入れる。 そして、二人はキスをしながら、ベッドに倒れ込んだ。唯斗は風香の耳元で「好き、好きだよ。」 そう囁きながら、風香を抱いた。
/81ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加