第三章

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愛子は、暫く経ってから一輝の両親に故郷に帰りたいと話た。 「広江さんが、言ってくれたんです。流れ行く時代を故郷で過ごし長生きして欲しいと。だから、後ろ向きな気持ちではありません。津波で流された街がどのように復興し、皆どう生きていくのかをこの目で見たいと思いました。そして、自分もどう生きていこうかじっくり考えたいのです。あの津波で両親を亡くしてから、死ぬことしか考えられなかった。だから、今なら違った景色が見える気がするんです。」 一輝の父は、そうかと静かに言った。 「愛子ちゃんの人生だ。思うように生きなさい。ただ、ここも君のいていい場所なんだという事を忘れないで欲しい。広江婆さんがいう故郷は必ずしも、君がは育った街を指しているわけではないだろう。だが、原点に戻り、一からやり直すのもいいと思うよ。」 一輝の母も優しく頷いた。 「またいつでも、帰ってらっしゃいな。いつでも待っているからね。身体には気をつけて、栄養のあるものをしっかり食べるねよ。」 愛子はありがとうございます、必ず帰ってきますと言って、故郷に帰る準備をした。 風香とはあれから会っていない。謝りたいことも沢山あるけど、まだ面と向かって話ができそうにない。 電話で、風香と話をしようか、、、。 一輝の事も、好きだ。好きだからこそ甘えられないと思った。 愛子が逃げていた事から向き合って、それから一輝に告白の返事をしようと思うのだった。 愛子は、風香だけは、謝らないといけない事や誤解を解かなければならないから、故郷に帰ってからすぐに連絡を取ろう。 あとの皆には黙って、故郷に帰ろうと風香は思うのだった。
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