第三章

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愛子が早朝、故郷に帰って行った後、 一輝の両親は、子供達を集め愛子の事を話した。 愛子が津波で両親を亡くして声が出なくなった事、これは周知の事実で由香らに暴行を受けていた事、広江が愛子の曾お祖母さんだったことを全て話した。 そして、故郷に帰り、原点に戻って色々考えたいと。 風香は、みるみる涙が溢れていく。 「私、愛子に沢山酷いこと言っちゃった。どうしよう。自分の事ばかり考えて、愛子の事ちっとも考え無かった。」 一輝の母は、風香に優しく笑う。 「愛子ちゃんね、風香に謝りたい事もあるし、誤解も解きたいから風香には故郷に帰った後すぐに、必ず連絡するって言ってたわよ。 ただ、他の皆とはすぐには連絡を取る事はないって言っていたわ。」 一輝の父が一輝達を真剣な眼差しで、子供達を見た。 「愛子ちゃんは、逃げたわけではない。自分と向き合うために、故郷に帰って行ったんだ。お前達は、どうするね?愛子ちゃんとの出会いを無かったことにするか?それとも、その出会いを無駄にしないのか、それはお前達次第だ。さぁ、しっかり考えなさい。」 風香達は帰って行った。 一輝は一人部屋で考える。 一輝は、愛子の事が好きになって、それを嫌がってないふうに見えたから、期待し距離を自分の勝手で縮めようとしていたのかもしれない。 それに、一輝は自分の将来をなんとなく流れに任せていこうとしている事に、初めて恥ずかしさを覚えた。 愛子は、自分と向き合うために故郷に戻った。そう生きるために。 なら、一輝は、どう生きていく? 愛子との出会いは、無にしたくはない。 それに、好きだという気持ちはずっと、持ち続けるだろう。 将来、また愛子と会った時、改めて告白しようと思った。それまでに、愛子に会って恥ずかしくないように生きたいと思うのだった。
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