第四章

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愛子が故郷に帰った後、季節は秋から冬になり、2学期の終わりが近づいていた。 あれから程なくして、風香と唯斗が付き合う事になったと聞いた時は皆驚いた。 一輝の母は、風香に耳打ちしながら言った。 「一輝一筋だったんじゃないの?」 風香は、色々あったんですと、笑った。 一輝は、唯斗の長年の恋が実った事を喜んだ。 「良かったなぁ。唯斗、風香を大事にするんだぞ。」 「もちろんそのつもりだ!」 皆祝福してくれていると思った唯斗だったが、 ただ1人全く笑っていない人物がいた。 それは、蒼太で、蒼太は理性を保ちながら冷静にゆっくりと唯斗に詰め寄った。 「唯斗君、よもや風香に手を出してしまったわけではないよね?健全なお付き合いだろうね?」 蒼太は恐ろしく冷たい眼光を唯斗に放つ。 「いや、あの、、、」 唯斗は、慌てた様子で、風香を見る。 風香は、顔を真っ赤にして唯斗をチラチラ見る。 蒼太は、限界点を超えたようで、鬼と化す。 「風香に手を出したらコロスと言ったろうがー!!」 蒼太は、唯斗の首を両手で締め上げる。 「蒼兄ぃ!!辞めて、辞めて!」 風香が蒼太の手を引き離そうとする。だが、アホな唯斗は叫んでしまう。 「避妊はちゃんとしましたぁーー!!」 蒼太は、更にキレる。 「当たり前だ!ボケ!」 結局、一輝達が蒼太を唯斗から離し、蒼太は一輝の両親に宥められた。 「蒼太、気持ちは分かるがこれも、風香達が大人になるって事だ。受け入れろ!」 蒼太は、しくしく泣く。 「俺の可愛い風香が、、、。」 項垂れる蒼太を、一輝の母が慰めてやる。 「まあまあ、どっちが大人なんだか。仕様がないわね。今日は蒼太の好物を作ってあげるから、それ食べて少し落ち着きなさいな。」 はい、と小さく呟いた蒼太だった。 唯斗は、颯に言う。 「そういう訳だから、未来のお義理兄さん!宜しくね?」 颯は、顔が引き攣る。 「お義理兄さんなんて呼ばれるのは、絶対やだ!無理!!!」 「いや、絶対呼んでやるから!楽しみにしてろ!」 颯は、頭を抱える。唯斗の事は、友達として最高だし、大好きだ。だが、義理弟となると悪寒がする。 ふと、顔上げ、風香を見る。 恥ずかしそうにしているが、嬉しそうだ。 「そっか、風香は一輝への気持ち、昇華できたんだ。凄いなぁ〜やっぱり女は強いよ」 「俺の風香を思う気持ちが勝ったんだな!うん。」 颯は、また顔が引き攣った。 唯斗は、本当におめでたい奴だと思ったのだった。
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