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愛子は目を覚ますと、真っ白い天井が見えた。
それと同時に、腹部に痛みが走る。
っ痛、、、。
「目が覚めましたね。井川さん。ここは保健室です。分かりますか?」
養護教諭の中里蒼太は、愛子に優しく声をかける。
愛子が起き上がろうとするが、身体中が痛むのだろう、なかなか起きれないでいる。
中里は、そんな愛子を制して、ゆっくり寝かした。
「無理してはいけませんよ。まだ寝ていなさい。井川さん、身体中殴られて、おまけに首を絞められた後があります。私と一緒に病院行きましょうね。」
愛子は、それだけはやめてくれと言わんばかりに、首を振る。
「いけません。絶対に病院行きますよ。私の知り合いの診療所が近くにあるので、そこへ行きましょう。準備しますから大人しくしているように。」
愛子は首を振る。
だが、身体の痛みからか、また意識を手放した。
中里は、こんなになってまでどうして庇うのかとため息をつく。そして、愛子の頭をそっと撫でる。
井川愛子の家庭環境を中里は知っている。そして、声を無くしている事も。
愛子を見かける度、中里は声をかけていた。
それはなぜか。
いつも顔色が悪く、痩せていっていたから。
どこか、具合いは悪くないか、食事は取れているのか。保健室で休むか?お節介かもしれないが、どうにも彼女が気になって仕方なかった。
その度に彼女は下を向きながら首を振り、走り去っていくのだ。
中里は、いつか愛子が死を選ぶのではないかとそれが一番心配だった。
愛子の姿、表情、何より目がずっと虚ろだ。
何か、悪い事がなければ良いがと思っていた矢先ー。
「蒼兄ぃ〜、井川さん目覚ました?」
ガラッ保健室のドアをスライドし、長身の男子生徒2人が入って来た。
中里に声を掛けたのは、吉田颯3年生。身長は180cmと長身で小顔で目はキリッとして鼻筋が通り、いわゆるイケメンだ。いつもニコニコして、何を考えているか分からない。中里の20歳下の従兄弟で一緒に暮らしている。
颯の後ろから来たのは、荻野一輝3年生。身長は175cmと颯よりは少し低いが、こちらは目鼻立ちはハッキリしている。真面目だが、気の弱い所、人に流される所が心配になる。先程、愛子に話していた診療所は一輝の実家だ。
中里と颯が住んでいるのは、その診療所の隣である。
愛子を助けたのが彼らでよかったと思う。
彼らと荻野先生なら、愛子の生きる力を取り戻せる可能性がある。
「一度目を覚ましたけど、すぐ眠ってしまったよ。悪いけど、彼女を俺の車まで運んでくれる?」
「あ、それじゃ俺が、、、」
一輝が彼女に近づこうとしたら、颯が
「一輝はダメ。力弱いから。俺がお姫様抱っこしてつれていくよ。」
颯は、愛子の掛け布団を引き剥がし、軽々と持ち上げた。
やはりと、颯は思う。
軽い。軽すぎる。ちゃんと食べてるのか?
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