第一章

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愛子は目を覚ますと、真っ白い天井が見えた。 それと同時に、腹部に痛みが走る。 っ痛、、、。 「目が覚めましたね。井川さん。ここは保健室です。分かりますか?」 養護教諭の中里蒼太は、愛子に優しく声をかける。 愛子が起き上がろうとするが、身体中が痛むのだろう、なかなか起きれないでいる。 中里は、そんな愛子を制して、ゆっくり寝かした。 「無理してはいけませんよ。まだ寝ていなさい。井川さん、身体中殴られて、おまけに首を絞められた後があります。私と一緒に病院行きましょうね。」 愛子は、それだけはやめてくれと言わんばかりに、首を振る。 「いけません。絶対に病院行きますよ。私の知り合いの診療所が近くにあるので、そこへ行きましょう。準備しますから大人しくしているように。」 愛子は首を振る。 だが、身体の痛みからか、また意識を手放した。 中里は、こんなになってまでどうして庇うのかとため息をつく。そして、愛子の頭をそっと撫でる。 井川愛子の家庭環境を中里は知っている。そして、声を無くしている事も。 愛子を見かける度、中里は声をかけていた。 それはなぜか。 いつも顔色が悪く、痩せていっていたから。 どこか、具合いは悪くないか、食事は取れているのか。保健室で休むか?お節介かもしれないが、どうにも彼女が気になって仕方なかった。 その度に彼女は下を向きながら首を振り、走り去っていくのだ。 中里は、いつか愛子が死を選ぶのではないかとそれが一番心配だった。 愛子の姿、表情、何より目がずっと虚ろだ。 何か、悪い事がなければ良いがと思っていた矢先ー。 「蒼兄ぃ〜、井川さん目覚ました?」 ガラッ保健室のドアをスライドし、長身の男子生徒2人が入って来た。 中里に声を掛けたのは、吉田颯3年生。身長は180cmと長身で小顔で目はキリッとして鼻筋が通り、いわゆるイケメンだ。いつもニコニコして、何を考えているか分からない。中里の20歳下の従兄弟で一緒に暮らしている。 颯の後ろから来たのは、荻野一輝3年生。身長は175cmと颯よりは少し低いが、こちらは目鼻立ちはハッキリしている。真面目だが、気の弱い所、人に流される所が心配になる。先程、愛子に話していた診療所は一輝の実家だ。 中里と颯が住んでいるのは、その診療所の隣である。 愛子を助けたのが彼らでよかったと思う。 彼らと荻野先生なら、愛子の生きる力を取り戻せる可能性がある。 「一度目を覚ましたけど、すぐ眠ってしまったよ。悪いけど、彼女を俺の車まで運んでくれる?」 「あ、それじゃ俺が、、、」 一輝が彼女に近づこうとしたら、颯が 「一輝はダメ。力弱いから。俺がお姫様抱っこしてつれていくよ。」 颯は、愛子の掛け布団を引き剥がし、軽々と持ち上げた。 やはりと、颯は思う。 軽い。軽すぎる。ちゃんと食べてるのか?
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