第四章

4/15
前へ
/81ページ
次へ
ある日一輝達のクラスに、1人の教生がやってきた。化学が専門の大学3年生だった。 「岡田優也と言います。2週間という短い間ですが、宜しくお願いします。」 クラスの女子達は、「かっこいい!!」と黄色い声をだしまくっていた。 確かに、目が颯よりキリッとしていて、鼻筋も通り、かっこいい部類なんだろう。メガネをかけているからインテリに見えるし、何より颯より身長が高くスラッとしている。 声は少し低くていい声していた。 そんなだから、女子からしたらクールに見えるんだろう。 颯は、教生なんていくらでも、来ていたから特に気に止めていなかった。 どうでもよかった。 だけど、なぜか目が合う。教生は一瞬颯を見つめ、何事も無かったように、目線をそらし授業を始めた。 ″何なんだよ。教生如きが。″ 颯は、心の中で、教生に悪態をついた。 そんな事今まで無かったが、なんとなく、この教生には反抗したくなる颯だった。 颯は、いつも授業は全く聞いてなかった。一度、教科書をサラサラっと読んで全て覚えていたから、聞く意味もないと思っていた。因みに、参考書は一輝が持っていたのをパラパラと捲っただけだ。それで、颯の頭に全て記憶される。 常に全教科満点で学年トップをキープしているから、颯が授業を聞いてなくても、サボって出ていなくても、教師は颯を咎める者はいなかった。 それよりか、この学校から2人目の日本で一番難しいと言われる大学に入学できるのではないかと期待されていた。 1人目は今目の前にいる教生だったらしいが。 だが、颯はそんな事に全く興味を持っていなかった。 颯は、一輝と一緒にいられればそれで良かった。 愛子もいなくなったし、もっと一緒にいられると嬉しく思っていた。 学校にいる時も、学校から帰ってもほぼ毎日一輝の家に入り浸った。休みも同様だった。 そんな事を思いながら、肘を着いて窓の外を見ていた。 「吉田君。今は授業中です。教生の私の授業はつまらないかもしれませんが、こちらに集中して下さい。」 「なら、もっと面白〜い授業してくださーい。」 颯は、いつもの何を考えているか誰も分からない笑顔を教生に見せた。 「そうですね、ここでの授業は、君とは違う一般庶民向けの教材を使ってのものですから、つまらないでしょう。ではこうしましょう。君にはハイレベルな授業をしてあげますから、毎日放課後残って下さい。」 「はい?そんな遠慮します。先生は教生で色々忙しいでしょう?お気持ちだけ受け取っておきま〜す。あ、トイレ行きたくなっちゃった。トイレ行ってきま〜す!」 颯は、教生に顔を向けずに手をヒラヒラさせて、教室を出た。 「颯!!」 一輝は颯に叫んだが、既に教室を出てしまっていた。 「先生すみません、あいつ、、、」 教生は、いいんですよと言って授業を再開した。
/81ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加