第四章

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颯は、教室を出て廊下を走る。 泣きそうなのを必死に抑えながら、走るのだった。 そして、知らない間に理科準備室に来ていた。勢いよく扉をスライドして開けた。 教生はいなかった。 颯は、理科準備室に入り、扉を閉めた。 『うわぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!』 颯は、一輝が愛子が好きだと言うことを聞いて、今まで抑えていた感情が初めて表に爆発した。 愛子がいなくなって、またずっと一緒に恋人でなくても親友として、一輝といられる。それだけが颯の支えだった。 なのに、一輝は目の前にいる颯を見てもいなかった。 ずっと先を見ていた。 そして、颯を置いて、その先の未来を愛子と共に生きたいと一輝は思っている。 颯には、何も無い。 どうしていいか分からない。 ただ、泣き叫ぶ事しか今はできない。 颯の”心の叫び”がこの部屋に響き渡る。 "僕は、どうすればいいの!?一輝以外、僕には何も無くて、空っぽなのに!!誰か助けて!誰か、僕を、本当の僕を見つけて!!!" 「吉田君?」 颯の知らない間に、教生が理科準備室に入ってきていた。 颯は、いつものような笑顔ができない。 涙が止まらず、自分の感情が抑えられないでいた。 教生は、いきなり颯を抱きしめた。 「好きなだけ泣け。俺がずっと傍にいてやるから。」 颯は、教生にしがみつきながら、顔を思いっきり歪ませ、涙を流した。嗚咽が出るほど泣くのは、赤ん坊以来だ。 昨日知り合ったばかりで、しかも最悪な教生にこんな姿を見せるなんて、颯は信じられなかった。でも、濁流のように溢れ流れできたものは、颯には止めることができなかった。 颯が少し落ち着きを取り戻した頃、教生は颯をソファーに座らせる。 「ほら、コーヒー飲めよ。」 コーヒーを入れたマグカップを颯に渡し、颯の隣に教生は座る。そしてメガネを外し、窓を少し開けタバコを吸い始めた。 「教生が学校でタバコ吸っていいの?」 「バレなきゃいいだろ。」 「あんたは真面目なインテリ教生じゃないの?昨日女子達がキャーキャー騒いでたよ?」 「そりゃ一応教生だからな、そのフリくらいはするさ。それに、今も昔もこの学校は優秀で、そういう人間が大好きだろ?これが本来の自分だよ。」 颯は、へぇ〜と言って下を向く。 「お前、一輝君になんか言われたのか?」 「何でそう思うの?」 「感、かな。」 「なにそれ。」 「彼に振られたんだろう?」 颯は、何で分かった?と言う表情を教生に向けた。 「当たりか。何で分かったかってのは、俺もお前と同じゲイだからな。」
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