第四章

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保健室で風香はお弁当を食べながら、ため息ばかりついてしまう。 「蒼兄ぃ、最近、一輝と颯の様子がおかしくない?」 そうだねぇ〜と言いながら、蒼太はコーヒーを飲む。 「二人とも、全然喋らないし。颯は一輝の家にも一切行かずに、部屋に篭ってばっかだし。しかもだよ?あの颯がいきなり勉強しだしたんだよ?どーしちゃったのよ。」 「颯は、日本で一番の難関大学を首席で受かるために勉強してるんだよ。」 「はぁ〜?マジで?ほんと、どーしちゃったのよ。あんなに、一輝と一緒の大学行くとか言ってたのに。」 「まぁ〜皆大人になっていくってことだよ。」 そういう物かなぁ〜と言いながらお弁当を食べる。 蒼太は、本人から聞いた訳ではない。だが、颯が突然そう言い出した理由は知っている。 その日、たまたま理科準備室の前を通った時だった。普段使われていない、そこから声がしたので不信に思って部屋を覗いた。 すると、ソファーの上に教生が颯を押し倒し、お互いの身体を密着させ貪るようにキスをしている所を見てしまったのだ。 教生の顔が離れると、颯を愛おしそうに見下ろし、頬に手を当てていた。颯も、蒼太が見た事の無い嬉しそうな顔をしていた。 蒼太は衝撃を受けた。 そして、颯が出て行った後、蒼太は理科準備室に入って行った。 「岡田君、うちの颯に手を出してどういうつもりですか?」 優也は、蒼太から目を離さず真っ直ぐ見る。 「彼が好きだからです。先程、彼から恋人になって欲しいと言われましたので快諾しました。」 「たった2週間であの子の何が分かってそんな事いうんです?」 「あなた方が、見た事のない本当の彼を見て好きになりました。それがいけませんか?」 蒼太は、黙るしかなかった。颯は本心を蒼太にでさえ、絶対見せなかった。 なのに、岡田優也には見せたのか? 蒼太はショックを受けたのだった。 その日、家で颯は難関大学に行きたいと蒼太に行って来たのだ。 颯の生き生きとした目に、ダメとは言えなかった。
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