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結婚式も終わり、愛子と一輝は挙式が行われた近くの海に二人で来た。
二人で浜辺を歩きながら、一輝は自分のこの四年間を愛子に話し始めた。
「愛子が故郷に帰った後、自分の将来を真剣に考えたんだ。広江さんが愛子に、”流れゆく時代を故郷で沢山過ごして、長生きしてください”と言ってたでしょ?それを聞いて、俺は俺の過ごした街の人々が流れゆく時代を長く生きれるように手助けしたいと思ったんだ。だから、医者になって父さんの診療所を継ぐことを決めたんだ。
それに、愛子のように辛い目に合った人の傍で、寄り添って生きたいと思ったんだ。
だから、愛子に出会えたお陰で自分の生きる道を決めることができた。」
「そっか。一輝ならきっといいお医者さんになれるよ。応援してるよ。」
「愛子は、故郷でどうしてるの?」
「私はね、総合病院で看護アシスタントしてるよ。一輝のお父さんが紹介してくれたの。そこで働きながら、変わりゆく街を見てた。昔は辛かったけど、今はその変わりゆく街を見ながら生きていくのも悪くないって思ってる。」
一輝は立ち止まり、後ろを歩く愛子に振り向いた。
"もう一度、自分の気持ちを愛子に言おう。もう、離れたくない"
「俺、まだまだ未熟だけど、絶対いい医者になる。俺、ずっと愛子が好きだった。これから先もずっと好きだ。だから、俺と結婚を前提に付き合って欲しい。でも、愛子が故郷から離れたくないんだよな、、、?」
愛子は、一輝を抱きしめる。
"今も私を思っていてくれた。嬉しい"
「私も一輝が好き。ずっとずっと好き。確かに、故郷を離れるのは寂しいけど、一輝と離れている方がもっと寂しいって思ってた。だから、よろしくお願いします。」
一輝は、愛子にキスをした。
夕日が2人を照らしていた。
一輝と愛子は、顔を離し笑いあった。
”生きていて良かった。幸せになります。そしていつか、一輝と私が結婚して子供ができたなら、広江さん達から沢山の愛を受け継いだ私は、その子供に愛を注ぎ命を繋いでいきます。”
遠くからその2人を、見守るように颯と優也は見ていた。
颯達は、約束通り風香の結婚式を遠くから見ていた。
「颯、結婚式出席しなくて良かったのか?」
優也は、颯の腰に腕を回してギュッと自身の身体に引き寄せてやる。
「うん。風香の結婚式に水を差すような事したくなかったから。」
「そうか。じゃあ、行こうか?」
優也は、颯に微笑み、踵を返してゆっくり寄り添って歩く。
「いつか一輝君とちゃんと向き合おうな?俺も傍にいるから。」
「うん。ありがとう、優也さん。」
颯は俯きながら静かに涙を流す。
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