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「ぶひぃぃーッ! 誰だゴルァ!」
頭をワインと破砕した硝子で真っ赤に染めた豚鬼は年配の女を放り投げ、ワインボトルを投げた主を探した。
豚鬼が「誰だ!」と言いたげにマスターを睨みつけた。
全てを見ていたマスターは恐る恐るミルコを指差した。豚鬼は直様にミルコの方に駆けていき、胸ぐらを掴み持ち上げた。
「何しやがるんだ!」
豚鬼に吊り上げられるミルコ、持ち上がった瞬間に腰に架けられていたカタナから鞘が落ちた。何やら軽い音がした瞬間に豚鬼は視線を落とし、それを見てしまった。
ミルコはその瞬間に抜き身となったカタナの柄頭を左手の掌底で押し上げた。持ち上がった刀身は豚鬼の体を逆袈裟に切り上げた。激しい痛みを感じた豚鬼は瞬時に絶命、ミルコを吊り上げている手を放してしまった。バタンと天を仰ぐように倒れた瞬間、その衝撃で噴水のように血が吹き上がる。
いきなりの斬殺を前に酒場はもう大騒ぎ、逃げないとマズい。
これこそ本当に袋のネズミだ。そう考えたアニーはミルコの手を握り出入り口に逃げようとするが、パニックを起こした豚鬼の間を通り抜けるのは難しい、目の見えないミルコの手を引いて走り抜けることを考えると余計に至難の業である。アニーはどうしようかとまごまごしていると、先程の年配の女性がいつの間にか二人の後ろに回り込み、カウンターの後ろを指差していた。
「こっちです。裏口があります」
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