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アニーは足元が覚束ない中、やっとのことで森の出口まで辿り着いた。
唯一の取り柄であった癒やしの魔法はもう使えない、外に出たところで単なる醜女と罵られるだけのこれまでの生活に戻るだけ。癒やしの魔法が使えればこれだけで評価してくれる人もいたのだが、今やもう癒やしの魔法はない。
「あたしは何もない醜女、でも、これでいいんだ」
アニーは実家に帰り、このままひっそりと冬場の石の下に隠れているダンゴムシのように静かに暮らそうと考えていた。これがどんなに寂しい人生になるかはアニー自身がよく分かっていた。でも、それしか道はない。だってこんな醜女をお嫁にしてくれる男もいないだろうし、いるわけがない。
修道院か教会に戻る道も考えたが、癒やしの魔法も使えないし、教会や宗教、何より神様の実態を見たことで心の中の「信仰」が音を立てて崩れ去った自分が戻ってはいけないと考えていた。
アニーは新しい人生の一歩を光溢れる森の出口に向かって踏み出した。
おわり
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