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瞳が駅近物件にこだわるのには、理由があった。
瞳の家は、駅から遠かった。徒歩何分という世界ではない。
なにしろ、瞳の住む町には、駅がない。
まず、自宅から徒歩15分ほどで、最寄りのバス停にたどり着く。
ならば、「バス近」でもよいではないか?
否、それではダメなのだ。
そこから、さらにバスに乗ること約40分、ようやく駅にたどり着く。
駅は「目的地」ではなく、「出発点」のはずなのに…。
駅をなんとか「出発点」にしたかったのだ。
その願いを叶えるべく、開かれた扉の向こうを覗き込む、瞳。
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