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程なく、神職の装束に着替え、宮司となった社長が、再び現れる。
また上下紫色なのだが、スーツほどの違和感はなく、むしろ厳かな
佇まいだ。
「実は、ご存じかもしれませんが、この町ではエキ病が流行って
ましてね」
「疫病?」
「まあ、そうなんですが、当社からも最寄りの、鈴なり駅を利用した
男性だけが、次々に体調不良を訴えて、髪が抜け落ちるという奇病を
患っているんです。だから、『疫病』というか、『駅病』と呼ばれて
るんですよ」
「クダラナ…」
「笑いごとじゃ済まされないんですよ、患者さんからしたら」
「ごめんなさい。でも、私に何かできるわけでもないし…」
「そんなことありません。逆に、あなたにしかできない!
…と言っても過言じゃない」
「私は、別に駅近物件に住みたいってだけで、他に何ができるわけでも…」
「その気持ちの強さが大事です!「駅近』なんてもんじゃない、
『駅地下』に住めますから。しかも、無料で!」
「む、無料!?
…むしろ、コワイ…」
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