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「じゃ、説明しようか。まずはこの若葉棟について話すね」
──若葉棟は三階建てで上空から見るとT字型になっている。
ここ、事務室の向かいは医務室。体調が悪くなったり辛い事があったら医務室に行くこと。
そして廊下を抜けて真っ直ぐ行くと右側に大浴場とトイレ、洗面所があるらしい。洗濯機は班ごとに別れているから自分の班のところに洗濯物を入れるようだ。
もう少し廊下を進むと一番奥に食堂。ご飯やおやつはここで食べること。
それで一階には一班から四班までの生活部屋がある。事務室前の廊下をすぐ左に曲がるとすぐらしい。そこをまっすぐ突き当たりまで行くと、階段があるからそこから二階に上がる。階段は全部建物の左側にあるようだ。
二階は五班から十班の生活部屋が階段のすぐ先にあり、その辺は一階と変わらない。
唯一違うのが食堂の位置にプレイルームがあることらしい。プレイルームとは、テレビやおもちゃ、本など色々ある部屋で、賑わっているようだ。
三階は生活部屋の位置に“学びの部屋“と言う自習室がある。もちろん自分の生活部屋でやってもいいが、ただ消灯時間過ぎてもまだ勉強したい時や、分からないところがある時は、いつも教えられるスタッフがいるらしい。
「──まぁ、後は夜間のスタッフさんが寝る部屋とかあるけど、そこはまた今度説明するね」
そうゆりちゃんは言葉を締めくくった。
部屋が沢山ある事に驚いた。今まで住んでいた部屋はものすごく小さくて、キッチンとリビング、それと小さな部屋しかなかった。お風呂は浴槽はあったものの非常に小さかった。
そして、ここにいる人が多いことに恐怖を抱いた。
怖い。知らない人のことは一切信用できない。急に暴力を振るうかもしれないから。ママの彼氏は初対面だろうが躊躇せず僕に暴力を振るってきたし、それが当たり前だった。
「ここまでは大丈夫?」
望み通りの回答をしないと、『駄目な子』と背中を何度も、何度も平手打ちされる。
だから、頷くことしかできない。
「一応これ渡しとくね」
ファイルに入っていた紙を差し出される。若葉棟の見取り図らしい。
僕は恐る恐るプリントを掴んだ。グシャっと紙のこすれる音が響く。
──まずい、殴られる。気配を、殺さないといけないのに。
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