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ゆりちゃんが去っていって僕は荷物を持ったまま立ち尽くしていた。
すると、モトがにこやかに歩み寄ってきた。
「祐輔、荷物こっちしまえよ」
モトが指した先には焦げ茶色の小さなタンスが置かれていた。
黙ってうなずき、鞄から少ししか入っていない服を詰め込む。
全部ボロボロで小さい服だ。
服なんて何年も買って貰えなかったから……
「祐輔それしか持ってないの? ゆりちゃんらに言って今度ショッピングモール連れてってもらいなよ。服とか文具買ってもらえるぜ」
「ショッピングモール、楽しいんだよ! あたしはね、アイス食べたりできるから好き!」
「アキは本当にアイス好きだねー」
「アイス、アイアイス〜」
アキは変なリズムと歌で踊り出した。踊りもめちゃくちゃで思わずプッと吹き出した。
「あー!」
……まずい、怒られるっ……
身を小さくした。身を硬くすれば、殴られても少しはマシだ。
「祐輔くんが笑った! やったぁ!」
予想もしない言葉が返ってきて思わず目を見開いた。
殴らないの? 僕は、悪い子なんだから。
悪い子はお仕置されて当然だ。
「祐輔くん笑っていいんだよ」
笑って、いいの?
感情は押し殺さなくていいの?
なんで……?
「祐輔、荷物しまったらこっちこいよ」
モトに着いて行ってベットがあった部屋に入った。さっきドアが開きっぱだったところだ。
部屋は意外と大きくて二段ベットの近くには棚が置かれていた。
「ここは“小部屋“。
で、この棚に自分のものを入れるんだ。俺はゲーム機入れてる。
服以外で入れるもんがあったら入れとけよ。あ、勉強道具は机の上な。
ベット俺が今、上使ってるんだけど、祐輔下でいい?」
小さく頷いた。寝れる場所があるなんて、すごいな……
柔らかそうな布団が輝いて見えた。
今までは狭い部屋で膝を抱えて眠っていた。
そんなのだから疲れは取れないし、身体はガチガチだった。
僕が何も棚に入れる物がないと分かるとすぐモトは小部屋を飛び出した。
「祐輔、プレイルーム行こうぜ! 掃除終わってるし、飯まで時間があるから」
「待ってモトくん。あたしも行くっ! お姉ちゃんも行こうよ」
「私宿題やるから。てかモトもアキも終わったの?」
「知〜らない!」
アキとモトは廊下へ飛び出して行った。
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