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首を傾げながらノートに『決めてない』と書いた。
「そっか」と寝っ転がっていたモトが起き上がった。
そのまま端っこに落書きをする。今日の衣装を着たモトとアキと、ユキちゃん。
「それ、今日の俺たち?」
『うん』
見られた恥ずかしさを感じながらうなずくと「すげーな」とモトは笑った。
「祐輔、プレゼントさ」
モトが言いかけたと同時にコンコンとノックが鳴った。
ドアが開いて顔を出したのは、ゆりちゃんだ。
「お邪魔します」
ゆりちゃんはパソコンとプリントを持っていた。
「今年のクリスマス、何頼む? 後ケーキどれにするか選んでくれる?」
プリントが渡される。僕たちの名前が左に書いてあって上にはケーキの名前が並んでいる。
「ねぇ、ゆりちゃん、これゆりちゃん作ったでしょ」
紙に目を落としてモトは呟いた。
「アンバランスだもん」
「ちょ……そうだけど! 言わないでよ〜! ……えーっと、食べたいのに丸つけてね。締切は二十三日だよ」
ゆりちゃんは顔を真っ赤にしてモトを突っついた。モトはくすぐったそうに笑みを浮かべる。不意に「あ」とゆりちゃんがこちらを見た。
「祐輔くん。お誕生日のリクエストデザート、クリスマスケーキと被っちゃったから二十六日でもいいかな?」
『大丈夫です』
「なにがいい?」
十分すぎるほど幸せなのに更に要求していいのだろうか。
悩んだけど、ペンを握り直す。
『出来たらでいいんですけど、アイスがいいです』
「オッケー」
「アイス!? やったぁ」
ノートを覗き込んだアキが歓声をあげた。
ユキちゃんとモトはそんなアキの反応を見てクスクスと笑っていた。
「本題に戻るけど、クリスマスに何リクエストするの?」
三人は口々にリクエストを告げた。
「祐輔くんは? 誕生日と合同だから沢山頼みなよ」
どうしよう。困っていると、「なぁ」とモトが声をかけてきた。
「俺の意見だからスルーしてもいいんだけど、祐輔さ、画材セット貰えば? なんかさ、絵を描いてるときの祐輔凄く楽しそうなんだ」
確かに絵を描くのが楽しくてたまらない。
最近の休み時間は大抵モトと話すか自由帳に落書きをして過ごしている。持っているのは十二色の色鉛筆だけ。絵の具セットはまだ図工で使わないから持っていないのだ。
『そうしたいです。画材セットがほしいです』
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