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モトとノートを使いながら雑談していると、モトの番になった。
モトは珍しく強張った顔をしている。
「行ってくる」
『うん』
廊下の出ていく後ろ姿を見送って自由帳を出し落書きをする。
ぼんやりと鉛筆を走らせながら目の前の消しゴムの絵を描いているとモトが帰ってきた。無理に明るい顔をしているような、気もする。
「終わったー! お、これ消しゴム? やっぱ祐輔は絵が上手いな」
『うん。モト、お疲れ』
「サンキュー。成績まあまあよかったよ。国語と理科、後体育と算数は『よくできる』だった。他は『できる』だし、図工は全部『がんばろう』だったけど」
『よくできる』が多いらしい。さすがモトだ。
モトは、勉強より運動が好きでエネルギーも全部運動に行くから勉強ができないと笑っていた。
でも、テストの結果を見るとほとんど満点だし、算数のクラス分けは一番上の『ぐんぐん』だ。転校してから二単元やっているけど、(単元ごとに小テストを実施してクラス分けをするのだ)僕は一番下の『じっくり』コースだ。
「今日クリスマスディナー楽しみだな」
『うん』
早く帰りたい。そう思えたのは太陽の家に来てからだ。
前までは家にいたくなかった。どこにも居たくなかった。
でも今は違う。
衣食住がきちんとあって殴られることもないし、優しくて安心できる人がいる。
幸せで、怖くなる。目が覚めたら、死んでてここは天国なのかもって。
もしかしたら、前の家の隅っこでうずくまって夢を見ているのかもって。
「大丈夫」
何も言っていないのにモトは優しくそう言ってくれた。
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