4.福

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 放課後。今日は同じ時間に終わるので一班みんなで帰ることにした。  いつも通り正門で待ち合わせて、全員で帰宅する。  カタカタとランドセルの中の筆箱と連絡帳、連絡袋に入ったプリントそしてあゆみを揺らしながら帰る。いつもよりものが少ないせいかよく響いて思わず身を縮めた。 「みんなどうだった? あゆみの結果」 「あたしはね、算数以外『できる』だった!」  低学年は『できる』か『頑張ろう』の二択らしい。そういえば前の小学校もそうだったな、全部ダメだったけど──と過去に意識が飛びかけたがユキちゃんの繊細な声でこちらに戻ってきた。 「アキも算数苦手だよね。私、授業あんま行ってないってのもあって国語以外全部『できる』か『頑張ろう』だった」  ユキちゃんは小さく笑いながら「頑張ったね」とアキの頭を撫でた。 「俺はまぁまぁ良かった」 「モトくん頭いいもんね」 「そんなことないよ。達には『落ちこぼれ』って言われてたんだし」  あの人、とは誰だろう。僕と同様親のことだろうか。モトはその話はおしまい、とでもいいだけに僕に目線を向けた。   「祐輔、すごいんだぜ。図工全部『よくできる』だって。俺なんて『頑張ろう』なのにさ」  なんとなく、拒絶する空気を感じ取った。モトも、闇を抱えている。闇に深入りしてはいけない。無理に話すと僕も、相手も闇に飲み込まれそうだから。   「えっ、すごい! 私も図工苦手」  成績の話や夕食の話をしているうちにあっという間に家に着いた。  生活部屋に戻ってのんびりしているとノックと同時にゆりちゃんが入ってきた。ゆりちゃんは少しせっかちでノックしながら入ってくる事が多い。 「みんなお疲れ様。早速だけどあゆみを頂戴。コメントとか書かないといけないからね」 「えー見ないでよ」 「私はあなた達の保護者だから見る権利がありますー」  あゆみを見せるのは嫌だったけど、ゆりちゃんがなんの躊躇いもせず『保護者』と言ってくれたことが嬉しかった。
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