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クリスマスディナーはとても素晴らしかった。おいしいチキンライスにサラダ、スープにプリン。プリンもチキンライスも初めて食べた。
席に着いた時「メリークリスマス! 祐輔くんお誕生日おめでとう!」とみんな声を揃えて言い、クリスマスと誕生日の歌を歌ってくれた。
こんなに沢山の人に祝われたのは初めてで胸の奥が熱い。
そして、美味しくて温かいご飯を僕の胸を照らす。
特別、と言うことで食堂内なら好きな場所で食べていいと言われていたので、僕はモトと食べることにした。ちなみにアキは同学年のみこちゃん達と食べていて、ユキちゃんも同学年の子と食べていた。学校ではひとりのユキちゃんだが、太陽の家ではしっかり者のお姉さんだ。
優しく、クリスマスソングが食堂内を流れていた。
「祐輔」
食べ終わり、生活部屋でのんびりしていた。
ユキちゃん姉妹はまだ帰ってきていない。
食堂を出る時、ちらっと見たら二人とも友達と盛り上がっていたからしばらく帰ってこないだろう。
『なに?』
「お誕生日おめでとう」
モトは引き出しから小包を出てきた。
驚いて目を見開く。薄い青色の包装紙が僕の視界をいっぱいに占めてきた。
「ほんの気持ち、だけど」
中から出てきたのは小型のスケッチブック。密かに欲しいと思っていたものだ。思わぬ、サプライズ。友達から何かをもらえるなんて──
嬉しくて何故が涙が溢れる。
「ゆ、祐輔。俺、なんかしちゃった?」
慌てたようにモトは言った。
首を急いで振って涙を拭い、ペンを取る。
『ううん、うれしくて、うれしくて。なのに、なんで泣いてるんだろう』
涙は悲しさや辛さの象徴なのに。
「俺もさ、太陽の家来るまで知らなかったけど、人って嬉しかったり、感動すると泣くんだよ」
涙は悲しさや辛さだけではなく、喜びや幸せの象徴でもあるようだ。そう言われると、冷たい滴が暖かく感じた。
「俺もさ、まだ、悲しい涙の方が多いんだけど、お互いにさ嬉しい涙の方が多くなるといいよな」
大きく頷いた。まだ僕の涙は昔の家の隅で流した涙の方が多いけれど、モト達といるうちに、嬉し涙の方が増えていくかもしれない。
嬉し涙の方が増えるか不安だし、自信はないけれど、きっと。
僕は涙を拭って微笑んだ。
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