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プレイルームにはたくさん人がいた。
温もりを意識したような部屋で大きな窓からは秋の夕日が差し込んでいる。
テレビを見る者、ボートゲームをするもの、ゲームをする者……
やっていることは違う。でも、共通して言える事はみんな楽しそうだった。
僕はギュッと足の指先を丸める。
テレビは、ママがいるときは見てはいけない。見ていいのはママが夜仕事に行った後こっそり見る。
でも、夜はアニメなんてやっていない。僕には理解できない言葉で大人達が深刻な顔で話している。
いつ帰ってくるか分からないママ。怯えながら、でもする事がなくテレビを見る。
だからニュースなんて嫌いだ。
「祐輔くん、一緒に『UNO』しよ!」
遊んだら、声が出ちゃいそう。
この雑踏に姿を眩ませないと、バレちゃう……
首を横に振って、部屋の隅っこに身を寄せた。
「祐輔、ゲームしよ。コントローラー二つあるからさ」
ゲームなんて、ダメだよ。存在が、バレてしまうのだから。
首を横に振ると、モトは僕の肩を軽くこづいた。思わずギュッと眼を瞑る。
ボコボコにされて、外に放り出される……
「ゆーすけ。遠慮しなくていいんだよ」
モトは優しく目を合わせて来た。目は、合わせちゃダメ。
頭をガシリと掴まれて、壁に打ち付けられるんだ。何度も、何度も、打ち付けて来る。目の前が真っ赤に染まっても、必死で耐える。ママは殴る──『あんたなんていなければ』と言う言葉とともに。
「みんなー、ご飯だよ」
いつのまにか入り口付近でゆりちゃんが立っていた。みんなわぁっと立ち上がり部屋を出る。
一歩手前で賑やかな会話が繰り広げられる。
それは遠い映画の世界のようだった。
「ゆりちゃん、今日のご飯なにー?」
「カレーと、サラダとバナナだよ」
「わーい! カレー!」
「なにサラダ?」
「グリーンサラダ。無理はしなくていいけど、出来るだけ頑張ってグリンピース食べなよー」
「グリンピースやだぁ」
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