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食後、みんなでプレイルームへ行った。カルタをしよう、となったのだ。
年末年始と言うことで職員さんは少ないが、ゆりちゃんはさっき来たようだ。
血がつながっていないのに、親でもなく仕事のはずなのに、年末年始来てくれることが驚きだった。と、言っても流石にバラバラではあるが、完全に家族にはなれないお休みの日がある。その時は他班の職員さんが来てくれる。
一班僕らに加え、碧斗やみこちゃんがカルタに参戦した。
ハキハキとゆりちゃんが読み上げる。モトとみこちゃんがとても強く二人の独壇場になった。
数分後、モトが勝利の汗を拭いながら「そう言えばさ」と顔を上げた。
「ん?」
カルタを片していたゆりちゃんが顔を上げる。
「触れ合いの日、ぐんぐんハウスの子今年も来る?」
「あ、うん来るよ」
毎年一月下旬か二月上旬、ぐんぐんハウスの子との交流会があるようだ。
乳児院で、卒業後多くの子どもが太陽の家に来るらしく、分校のような扱いらしい。
商店街の反対側にあるらしく、ここ太陽の家とは二十分弱距離がある。
「あーちゃんとかに会えるかな。後なおちゃん先生」
ワクワクしたようにアキは瞳を輝かせる。
アキは一年前、ぐんぐんハウスにいたので知り合いが多いようだ。
碧斗も何人か名前をあげて「会いたいなぁ」と呟いた。
「会えるといいね」
カルタを箱にしまいながらゆりちゃんは微笑んだ。
その後は、すごろくや坊主めくりを楽しんだ。どの遊びも初めてで、みんながルールを説明してくれたおかげで楽しむことが出来たんだ。
「はーい、みんなエプロンつけてしっかり手を洗ってください。餅つき始めるよ」
十二時を回った頃、準備が整ったらしい。ゆりちゃんが色とりどりのエプロンを長テーブルに置いた。プレイルームの窓から園庭を覗き込むと何人かのおじさんやおばさんは忙しそうに動いていた。
皆口々に歓声を上げ、エプロンのところまで突進していく。
僕とモト、それからユキちゃんはそれを少し遠くで見ていた。
正直言って、まだああ言った場は苦手だ。
「おおきいー!」
「ぶかぶか」
わぁわぁと騒ぎ立てる。
思わず耳を塞いだ。
「あ、低学年は黄色、中学年は緑、高学年は青ね! 園庭出たら消毒とマスク!」
慌てたようにゆりちゃんが付け加えた。
「先言ってよー」と口々に言いながらエプロンを身に纏って嵐のようにプレイルームを出ていった。
長テーブルにはエプロンがごちゃごちゃになっていた。
三人で思わず顔を見合わせて苦笑する。
緑のエプロンは僕には大きくて、モトの助言で黄色のにした。
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