5.年末年始

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 手を洗って外に出ると、低学年の子が走り回っていた。 「ダメだよ! 砂が入っちゃう!」  高学年の子が低学年の子を注意する。走らなくなったと思いきや、今度はおじさんたちにベタベタと甘えにいく。  それを横目に消毒液が設置されていたので、しっかり消毒した。それからマスクもつけた。  そして、中学生、高校生は園庭の隅でケータイをいじるか、話している。  大人たちは忙しく動いている。なかなかにカオスだ。  ようやく準備が整っていよいよ餅つき開始だ。  それにしても、お餅ってどうやってできているんだろう。じーっと見慣れないおじさんたちを見つめた。   「それじゃあね、はじめます」  はっぴを着たおじさんが木製のハンマーのようなものを、これまた木製の容器に向かって打ち付ける。横に座っていたおじさんんが横にあるボールに手を浸してから容器に手を入れ餅をひっくり返した。 「ハイッ、ハイッ」  リズミカルにぺったん、ぺったんと餅がつかれていく。  しばらくしておばさんが話し出した。 「皆さん明けましておめでとうございます!」 「おめでとーございます!」 「今年もね、餅つきをやらせていただく事になりました。えぇと、簡単にお餅ができるまでを話しますね。餅米、というものから作っています。こう、ペッタンペッタンする前に蒸しているのよ。器が(うす)、ハンマーみたいなのが(きね)です。杵は結構重いです。  そうそう、もう少ししたらお餅が柔らかくなるので、餅つき体験やってみない? あ、今このおっちゃん達が使っているのより軽い杵があるから、心配しないで。お友達とやってもいいよ」  お餅の出来方と名前を初めて知った。僕はまだ知らないことばかりだ。  この前の学校帰りに見かけた自動販売機も使い方が分からず、眺めていたらモトが教えてくれた。昔家に居れない時、よくコンビニにいびりたっていたから、買い物の仕方はなんとなく分かるのだけど。  ──僕はなにもわからないし、知らないのだ。
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