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「三学期の行事どうしようか? 長縄とか出来る?」
長縄。ヒュン、ヒュンと幻想の音が聞こえる。
元クラスメイトたちは、僕が飛ぶ時だけ縄を早く回した。僕の頬にベシッと当たると嬉しそうに手を叩いて笑い、立ちすくんでいると、背中を強く押し、激しく動く縄に僕を叩きつける。縄はママに叩かれる時より痛かった。
嫌な記憶だ。息が苦しくなる。痛くないのに、なんだかヒリヒリして頬に手を当てた。
「小田くん? 大丈夫」
はっ、はっと荒く息をしていると、モトが飛んできた。
「祐輔、落ち着いて、ゆっくり呼吸ね」
「保健室の先生呼ぶ?」
涙を零しながら首を横に振った。大事にはしたくない。
しばらくしてようやく落ち着き、息をゆっくり吐いた。
『ごめんなさい』
「ううん、小田くんは悪くないわよ。先生が無理に思い出させてごめんね」
「いやいや、祐輔も先生も悪くねーだろ! 悪いのは前の学校のヤツらだ!」
珍しくモトが語気を荒めて言った。
「あ、ごめん」
即座に謝るモト。モトが謝る必要なないのに、思わず身を竦めた僕を気遣ったのだ。
『ううん、あやまらないで』
モトは僕のための怒ってくれたのだ。
僕も悪いのだろうけど、きっと、前の学校の奴らも悪いんだ。
「ありがとう……それで、どうする? やめとくか?」
『ごめんなさい。出れません』
「うん、分かった。見るのも辛かったら保健室とかぬくもりルームで休んでてね」
先生はそう微笑んで「引き止めてごめんね、気をつけて帰って」と続けた。
ランドセルを持って二人並んで廊下を歩く。
「アキたち帰ったかもな」
うん、とうなずいた。
──モト、待たせてごめん。
歩きながらだと筆談ができずコミュニュケーションが取れるツールがなくなる。それが最近の困りごとだ。
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