6.新学期

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 ⚠️82ページまで地震・避難訓練についての話です。 * 「地震発生、地震発生、職員たちは子供たちの安全を確保してください。ドアの近くにいるものはドアを開け、机の下に潜り身の安全を確保してください。 廊下などにいるものは中央に集まり、落下物に注意しなさい」  一月中旬の日曜日。今日は避難訓練だ。施設に暮らしている僕らは、学校のように地震や火災訓練が必要である。なんせ人数が多いので、逃げる時に大変だからだ。  放送は心臓がぎゅっと苦しくなることが多いが、今回の訓練は事前に告知してくれていたので心の準備ができていた。  ユキちゃんは扉を開け、ぼんやりしているアキの手を引っ張って机の下に潜った。僕とモトもそれぞれの学習机に潜る。三十秒程して、再び放送が流れた。 「食堂で火災発生。  一班から五班で部屋にいる人は正面玄関から、六班から十班、プレイルームに居る人は緊急出口から園庭に避難してください。また、一階にいる人たちで廊下を通る場合ハンカチを口に当て姿勢を低くしてください」  正面玄関はいつも使っているもので、緊急出口とは建物の裏側にある屋外階段だ。  普段は使用禁止だが、緊急時は利用するらしい。  僕らはハンカチを口に当ててもう片方の手で頭を守りながら園庭へ避難した。  一番入り口に近いこともあってか、一番乗りだ。寒いが、その分空が澄んでいる。  そんな青空とは対照的な赤い服の人が立っていた。きっと消防士さんだ。  続々と若葉棟からも向日葵棟からもみんな集まってくる。  低学年の子は少し話していたが上級生から注意され、すぐに静かになった。 「皆さんこんにちは。宮ヶ丘消防局のものです」  マイクの音は予想以上に響き、もあああんとハウリングし、思わず身を竦めた。  アキたち低学年は無邪気に「こんにちはー!」と返事を返した。 「えー、ここまで避難するのに六分かかりました。もう少し早く避難できるようにしましょう。また──」  真っ青な空に声が響き渡る。  消防士さんは、過去の大地震のことや、避難の備えについて丁寧も説明している。顔を少し上げるとアキもいつもより大人っぽい表情で真剣に頷いていた。
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