番外編 “夏”

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え、待って、なんでそんなに余裕な表情してるの? まさか浮気した自覚がないとか? あの女とは一夜限りの関係で、たった一度じゃ浮気にならないって? この男、いつからそんなヤ〇〇ンみたいな発想するようになったのよ。 「ねぇ美月、誰が浮気したって?」 一言ガツンと言ってやろうと口を開きかけたその時、先手を打ったのは光樹だった。 なんだこの口調は。 光樹がこういう話し方をする時は、大体ドSになる時だ。 なんで私が責められてるの? 悪いのはそっちでしょ? 「光樹が…、」 「僕が?誰と?」 「さっきの…おばさ」 「遠藤さんのこと?」 未だ余裕たっぷりの表情で私を見据える彼を見て、もしかして私の勘違いだったのかもと思い始める。 しかしここで折れては私のプライドが許さない。 もしかするとこれは奴の戦略かもしれないし。 「その、遠藤さんとかいう女のこと…つ、突いたんでしょ?」 「……突いた?」 「その日、楽しかったんでしょ?」 「……まぁ、そりゃあね」 「またいつでも来てって、そういうことでしょ?」 「そういうことって、どういうこと?」 私の質問に淡々と答える光樹は、本当にいつもの彼なのだろうか。 私をじっと見つめてくる彼の目に、迷いはない。 嘘をついてる人間の目じゃないことは確かだ。 そうね。回りくどい言い方じゃ、きちんと伝わらないわよね。 「いつでもエッチしましょうってことで…っ」 全て言い終わる前に、塞がれた唇。 ほんの数秒触れた彼の唇はすぐに遠ざかり、至近距離で小さく笑った彼の息が、私の頬を掠った。
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