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「……さん……、日雅さん」
名前を呼ばれて目を覚ますと、湿った髪で前かがみになり俺を覗き込む陽花くんと目が合った。
「ん……あ、陽花くんおかえり」
俺は目を瞑ってぐっと伸びをしてから立ち上ると、再び陽花くんに視線を向ける。
陽花くんが俺の部屋着を着ている。ただ、サイズが合っていないようで上も下もぶかぶかだ。
「すみません……、今上がりました」
申し訳なさそうにおどおどした様子で俺を見つめてくる。
「うん、お疲れ様」
なぜまたそんな怯えた表情をしているんだろう。……しかし、人見知りではあるが、人と話す時は怖いほどしっかりと目を見ることができる子だ。
「そういえば陽花くん、さっきお風呂の扉開かないようにしてたよね?」
「え?!」
ギクリと目を見開いたかと思うと、露骨に目を逸らされた。陽花くんの弱味を見つけたように感じて、それをもっと探りたくなった。
「なんか隠したいことでもあるのかなーと思って」
冗談じみた笑みをして見せると、今度は顔まで逸らされた。顔と耳が真っ赤に染まっている。
宝探しゲームをしている子供にでもなった気分だ。
陽花くんの秘密を知りたい――。
「いや……、別に隠してるわけじゃ……」
なんとか絞り出したような小さな声で、陽花くんが言う。
「へぇ、じゃあどうして?」
今の俺、なんだか陽花くんに意地悪をしているみたいだ。陽花くんの嫌がることはしたくない……はずなのに、問い詰められたらどんな反応をするのか気になって仕方がない。心臓辺りがなんかこう……ドキドキする……、というよりもゾクゾクする……といったほうが近いかもしれない。
陽花くんのことを知りたい、もっと――……。
「……その……見られたくないだけ……です」
陽花くんはそう言うと、さらに赤くなってついに下を向いてしまった。
……え、見られたくないだけ……? いや、まぁ別に特別な理由を期待していたわけではないけれど。
「……あ、もしかして陽花くん、恥ずかしいの? 裸見られるの」
「…………」
返事をしてくれない。……どうやら図星のようだ。
「はーるーかーくん」
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