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陽花くんがやりたい! とはしゃいで可愛かったので、一緒にスマ●ラで対戦することになった。買ったゲームソフトの数は決して多くはないので、陽花くんの好きなものが偶然俺の家にあって良かった。
それにしても、久々にコントローラーに触れた。こうして陽花くんと一緒に遊べるのは楽しい。……うん、楽しいのだけれど……。
「……陽花くん、上手いんだね、ゲーム」
「え? 俺そうでもないですよ、オンライン対戦全然しないし」
そうでもない……? マジかこの子、俺陽花くんに散々殺られてるんだけど……。
「はははっ、謙遜しないの。さっきから俺、殺られっぱなしなんだよ?」
「えー、日雅さんは弱すぎるんすよ」
あっはは、はっきり言ってくれるじゃないですか〜。
「うわ、陽花くんひどーい」
「…………(無視)」
陽花くんはゲームに集中しており、瞬きもせずテレビ画面から目を離そうとしない。……あと俺に返事もしてくれない。
CPUも含め4人個人対戦に設定したのだが、何度やっても俺のル●ージくんはすぐに画面から消えてしまう。ごめんな、ル●ージ。
俺は今回も開始早々に死んでしまって、今は陽花くんのプレイを隣で見ている状況だ。
「チッ――……、CPU風情が……」
今陽花くんの口からは聞いてはいけないものを聞いたような…………あーもしかしてあれかな? 陽花くん、ゲームする時人格変わるタイプかな?
「危な、一瞬負けるか思った……。あ、お待たせしました! 日雅さん、次ステージどこがいいです?」
今の陽花くん、千切れそうなほど尻尾を振っている子犬のようですごく可愛い。ゲーム中は少し怖いけど……ま、こんなに可愛いんだからいっか!
~♪♪♪(着信音)
電話? 陽花くんのスマホからだ。すると、間もなく陽花くんがスマホを手に取った。
「……あ、もしも……」
『今どこおるん゛!!』
陽花くんの持つ携帯から女性の怒鳴り声が聞こえてきた。決して盗み聞きしたいわけではないが、相手側の声量が大きくて、会話が俺の耳にまで入って来る。
「え、あ……」
『終電の時間とっくに過ぎとるけど!』
電話相手の女性は相当頭にきている様子で、陽花くんの台詞を遮って次々と言葉を並べる。
「嘘、ごめん……あの」
『こんな時間まで何しとるん?! 連絡もせんと! 迎えなんて絶対行かへんで、自分で帰って来い!』
「え、あ……、……切られた」
酷い嵐のような電話が急に途絶え、陽花くんは呆然とスマホ画面を覗いていた。
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