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「……あの日雅さん、これ文おかしくないですか?」
1人悶々と考え込んでいると、文章の打ち込みが終わった様子の陽花くんが、確認のため俺にスマホ画面を向けて来た。俺の家に泊るって親に伝えるだけの文章に、俺の確認なんて必要か? と思わなくもないが……まぁいいか、可愛いし。
「うんおかしくないよ、大丈夫」
言われた通り文章を確認し、俺が微笑んでそう言うと、陽花くんはホッと安心したような顔をした。
「ほんとですか? ……なら送信っと、……げッ! 既読早ッ!」
ほんとこの子は、色んな表情を見せてくれるな……。
「じゃあ陽花くん、もう遅いし寝よっか」
俺はそう言うと、陽花くんのサイドの髪を耳にかけるように撫でた。
「あ、はい!」
陽花くんは一瞬びっくりしたような顔をしたが、すぐにほわっとした笑顔を見せた。
既に1時を回ってしまっているが、この子はまだ眠たくないのだろうか? 俺ん家で陽花くん、ちゃんと寝られるかな……。
床に就いてみると、やはりシングルベッドに男2人はかなり狭い。それに、すぐ傍で陽花くんの体温を感じるので中々寝付けない。陽花くんはそんな俺の隣で、すやすやと寝息を立てて眠ってしまっているけれど……、どこでも寝られる子なのかな。俺の家でちゃんと寝られるだろうかなんて心配しなくても全然大丈夫だったみたいだ。
今陽花くんは俺に背を向ける形で眠っている。寝顔も可愛いんだろうなぁ……、見てみたい。
……なんだか今日は、陽花くんに対して可愛い可愛い思いっぱなしだった気がする。自分が思っている以上に、陽花くんのことを気に入ってしまっているのだろう。懐かれたいと思っていたはずなのに、いつの間にか俺の方が懐いてしまっている。不思議な話だ。
陽花くんとは明日の朝でお別れだ……。今日は時間が経つのがあっという間だった。
陽花くんはゲームの他に何が好きなんだろう……。俺の2つ下ってことは、大学もしくは専門学校に入学するのか、それとも就職……あ、いや就職するなら今頃バイトなんてしていないか、もう4月だし……。
あれこれ考えていると、ようやく睡魔が襲って来た。それに身を任せて夢の中へ足を踏み入れる。
そうか、明日は目が覚めたらすぐ傍に陽花くんがいるのか。こんなに朝が待ち遠しいなんて生まれて初めてだ。
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