南無観世音菩薩

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南無観世音菩薩

僕は、あの日、飛び降りて死んだ。 気がついたときには、病院のベットだった。 何せ飛んだときの記憶がないのだから、よみがえったようなものだ。 記憶の断片が、あるときフラッシュバックしてつながった。 やっぱり僕は、あの時死んでいた。 そして、真っ暗な世界から時間を巻き戻すかのように生き返らされた。 傷は残ったけど、からだはオートマチックに治って行った感じがした。 それはそれは不思議な出来事であった。 「南無観世音菩薩(観音様助けてください)」と無意識に唱えていた自分がいた。 飛び降りた瞬間、たしかに僕は「南無観世音菩薩」とつぶやいていた。 真っ暗闇の世界に、一筋の光りがあたり「生きろ!」と声がした。 「生きろ!」の声は何度も聞こえて、聞こえる度に大きくなって目が醒めた。 僕は助かった。生かされたのだ。
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