「癒しのヒロイン」あなたは、何者?

3/14
前へ
/14ページ
次へ
3、帰宅  今日は、残業もなく早く帰れそうだ。  残業が当たり前的になるのは、賛成できない。  与えられた時間の中で、やり遂げる工夫もなくとまでは言わないが漫然と残業するのは、いかがなものか。  一方、給与面では時間給×1.5倍にはなるので、生活の為に進んで残る人もいる。  まあ、帰れる時は帰る。サラリーマン人生は長いのだから。  帰りの電車は、朝ほど混雑していない。  学生さんの時間帯が違うのか、まだ、働いている人が多いのか、それとも、歓楽街に足が向いている人が多いのかと言ったところだ。  最近は、以前より飲み会への参加も少なくなった。  何となく、面倒くさいのが先に立つ。同僚と飲む事や、帰りのルートもだ。  車窓から、暗くなった外を焦点の定まらない視線で追っていると、降車駅の案内コールが流れた。はっと我に返り、電車を降りた。  登りエスカレーターに乗り、改札口に向かった。  その時、「こんばんは」と、後ろの方で声がした。 その後もう一度「こんばんは」と、近くで声がした。 振り返って見ると、すぐ後に女性が立っていた。 「あ、昨日の傘の・・・・・・方 ですよね」 「はい、また会っちゃいましたね」 「はい、あ、昨日は助かりました。有難うございました」 「今日は、早いですね」 「ええ、残業が無かったので早く帰れました」 「そうなんだ、良かったですね。良かったのかな」と、彼女 「早く帰れる時は、帰る主義なんで」 「そうだ、そんな事より、傘を返さなくちゃ」と、俺は続けた。 「ビニ傘だから、いいですよ」と、彼女 「そう言う訳にはいかないですよ」  すると彼女は真顔になって、 「じゃ、今から取りに行きますか。自宅まで」 「え、これから、本当に、だって結構かかるよ」と、答えると 「冗談ですよ。ちょっと、ドキドキしました」と、笑っている。 「突然で、びっくりしたよ」と、私は正直に答えた。 そして、 「今日は、時間ありますか? 御飯まだですよね」と、続けた。  すると、少し口元を緩め 「それって、軟派ですか」と、いたずらそうな目つきで答えた。 「違うよ、あの時本当に助かったので、何かお礼しようと思っただけさ」 と、答えると 「空いてますよ。いいんですか、じゃ、お言葉に甘えて」と承諾してくれた。  そして、二人並んで改札口のゲートに向かった。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加