スクープ1 張り込み 第一話

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スクープ1 張り込み 第一話

 足元に投げつけた煙草をもみ消した。  新しいのを咥えようと胸ポケットに手をやる。  ぽんぽんと叩くと中身が入っていないのか、自分の身を触るような感覚。取り出し振り上げたが出てこない、角を叩くと申し訳なさそうに顔をのぞかせた。残りあと一本、買いに行こうか?  今度はズボンのポケットに手を突っ込んではどこかに入れたライターを探り出す。  今のライターは硬くて、押すのもおっくうで仕方ねえ、かといってオイルライターは重くてもちあるけねぇ。昔ながらの安全装置の付いていないライターを数個貰い受けた。やっと取り出し明かりにかざす、ガスもねえな。  迷いながらも開いた口から見える最後の一本を脇へ寄せ、使い捨てライターをねじ込み、胸ポケットにしまい込んだ。    顔を上げ、ずっと見続けた先を見た。  カメラを構え覗き込むこと数分。  それを何度も繰り返す。  三分、五分、十分―――。  日が傾いてきたがまだ明るい夏の夜。並んだ室外機からは、気温よりも厚い熱風が吹き付ける、それを何とか避けてはいるが、体重は減る一方。椅子代わりのクーラーボックスの中もペットボトルのお茶が半分も残ちゃいねえか。 足は、イラつき小刻みにリズムを取っている。  ヤニが切れてきた、買いに走るか?いやここで出てこられたら……。  落ち着かない指で、カメラを叩いては、まだじっと睨みつけるようにしてみている。  足まで来たら行くか。  時計は22時を過ぎた。大体時間は読めている、今日は集録もないから早い時間だと踏んでいたが、まだ出てこない。  こりゃあ仕切り直しか?  一度涼しいところへ…!   出てきた!  構え続けたカメラを構え直し、ファインダーを覗きシャッターを切り続けた。  張り込みをして一か月半、やっと帰れる!  ビルとビルの間から見続けた豪華マンションの裏口。今まさに超売れっ子、抱かれたい男ナンバー1俳優が出てきた!  よっしゃー、このまま隣の女も?  まじ・・・かよ~↘  ガーン!という文字が頭の上から降ってきて、残念な音楽が流れてきた。    脱力。   はー、ダメだ、ゲイかよなんにもならねえ。  隣にいるのはどう見ても若い男、下手したら少年(ガキ)じゃねか。背の低い男と出てきやがった。   力尽きた。  写真を見返す。  抱かれたい男ね。まさか抱かれてるんじゃねえだろうな?  仕方ねー、このまま持って帰って調べるかぁー、ハア。  ア~と言いながら、頭をかきむしり、地団駄を踏み、くたびれた大きなカバンに相棒を入れ、パンパンになった簡易灰皿の煙草の吸殻と、足元の物も集め、鞄のポケットにねじ込んだくしゃくしゃのビニル袋を取り出し入れた。ムワッと舞う灰にむせながら口を結ぶ。またここで構えることを考えたら痕跡は消しとかなきゃいけない。   疲れた。  アスファルトの中に足が溶けていくような、重い足を引きずり、会社へと向かった。
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