102人が本棚に入れています
本棚に追加
「長編小説も、勿論楽しい読み物です。壮大な世界観で、人物の相関性を知り、散りばめられた伏線を拾いながら読み進める。ワクワクします。読者は気合を入れて、ストーリーの行く末を追っていきます」
リタ君が半分だけ振り返り、後方の本棚を指差して続けた。
「短編小説を読むのには、そんな気合は要らない。かしこまらずに、コーヒーや紅茶のおかわりの合間、次のカクテル一杯が来るまでの間にでも、手に取る事ができる。
未来を考え過ぎて、恋人とのこれからを不安に思う合間にでも、寄り添う事ができるんです」
「……寄り添う、短編小説……」
「はい。短編小説は寄り添います。あなたに。
恋人との『長編小説』を思い描いているお姉さんにも。そっと、優しく、ね」
「でも……」
慌てて反論しようとしたけれど、私の口からは何も出なかった。
ひとりで不安になって、大騒ぎして、空回りして、焦ってる。そんな自分を見透かされていた。
「お姉さん。この本、お貸しします。また紅茶を飲みに来てください。
その時にお返しいただければ結構ですから」
◇
最初のコメントを投稿しよう!