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「きっと、洋ちゃんも心の中で琴子さんに感謝してくれてますよ。
仕事が終わって恋人が待つ家に帰れるなんて、素敵な事です」
「だったらさ! もっと私を構ってくれてもいいと思うの。
私は洋ちゃんの恋人! ただの居候でも家政婦さんでもないもの。やっぱりLOVEが欲しいよ」
他愛もない恋人の愚痴を、リタ君は笑って受け流す。
茶化して返される返答を、私はちょっとだけ魔に受けて適当に反論して。
レモンティー一杯分。
もし名前を付けるなら、私とリタ君の関係は、そんな繋がりだと思う。
互いを詳しく知らないけれど、どこか明け透け無くて、少しだけ遠慮するような。
◇
「ごめんください」
私がレモンティーを飲み終えて、今日借りていく事に決めた一冊をバッグに入れた時だった。
遠慮がちに鳴った稲穂鈴の扉からそっと顔を出した女性が、微笑みながらそう呟いていた。
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