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図星。
驚くほどに、気持ちが軽くなった気がする。
それに、初めてのお店にドキドキして、入った時は少し背や肩が張っていたかもしれない。
私のささやかな嫌味も軽くいなされて、「そうだね」と諦めを吐きながら笑った。
少しして、間接照明の色が少し淡くなった。
「ごゆっくり」。私にそう告げて、リタ君が夜のバータイムに備えて準備を始めたようだ。
レモンスライスをもう一枚カップに落としながら、私はその様子をぼんやり眺めた。こんな緩さ、随分と忘れていたような気がする。
二杯目のレモンティーを注文した時、追加のレモンスライスとは別のお皿に添えられキューブ型のチョコレートが、目の前に出された。
ひとつ摘んで味わいながら、カウンターの中のリタ君と言葉を交わす。
このお店のこと、この街のこと、そして、洋ちゃんへの愚痴の数々も。
私の今日の不安の原因が、その恋人との喧嘩という事は極力隠して、茶化した冗談みたいなニュアンスで、いつの間にかリタ君に殆どを話していた。
洋ちゃんへの口汚い文句にさえ、リタ君は嫌な顔せず時には笑いながら相槌を打ってくれた。
そしてリタ君自身について。
新規客のくせに失礼かとも思ったけれど、同年代らしいリタ君の事に興味が湧いた。
それにも彼は手を止めずに、微笑みながら答えてくれた。簡潔に、過不足なく、時にははぐらかして。
「リタ君、ところでさ、このお店どうして『短編堂』っていう名前なの?」
何気なく、店の名前の理由を尋ねた時だった。
リタ君の微笑みが少し増して、私はちょっとたじろぐ。その様子を見てまた少し笑いながら、彼がカウンター下のスイッチをカチッと押した。
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