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第41話 勇者は魔国で暮らしている
カイル兄様の説得に苦戦するかと思ったけど、拍子抜けするくらいあっさりと魔国行きを許可してくれてから、一週間がたった。
(スノー、グレン楽しみだね)
(そうだね。どんなおに……じゃなかった魔獣がいるのかな)
(私も、魔国にしかいない魔獣を調理するの楽しみです)
スノーは、魔獣をお肉と言いそうになって、言い直したけど、食材としか見てないね。
まあ、倒して、食べるわけだから間違ってはいないし、自然の摂理と言えるけどさ。
スノーは肉食だけど、出会った頃は、こんなに食いしん坊キャラじゃなかったはずなのにな。
グレンも既に料理することを考えている。
早く新たな食材をどう美味しくするかを考えワクワクしている。
聖獣だからすごく強いんだろうから、どんな魔獣が相手でも倒しちゃうだろうけどさ。
「ルシフェル。大分、森の奥まで歩いて来たけど、ゲートがある場所には、まだ着かないの?」
「ゲートは、森の最深部にあるからな。
それに歩いてというが、アイリスはスノーに乗っているだけだろうが」
そうなんだけどさ。乗っているだけでも疲れるんだよ。
「そうだけど、三歳児の体には、森の浅いところでも歩くの大変なんだよ」
「なら、我が抱っこしてやろうか?」
「!!……だ だ大丈夫です」
ルシフェルに抱っこされるってことは、あのイケメンフェイスを間近で、直視するってことでしょう。
無理です。精神がもちません。
「着いたぞ」
そんな話をしていると、ゲートのある最深部に到着した。
「ここ洞窟だよね?」
「そうだぞ。この洞窟の中を進めば、魔国に着く」
「魔物は、上位魔族がいなければこちらに来れないって、言っていたから魔国側の入り口は、こんな簡単じゃないんだよね?」
「ああ、魔国側の入り口は、魔力がかなり高くないと開けないようになっているぞ」
この森が人族から魔の森って恐れられていて、よかったよ。
こちらからは、簡単に魔国に行けてしまうから、魔獣から逃げるのに洞窟に逃げ込んだ人とかいたら、魔国に迷い込んじゃうよ。
しかも魔力がかなり多くないと開けないから、こちらには二度と戻って来れなくなってしまう。
ルシフェルは、このまま残したいみたいだし、対策をしておかなくちゃだね。
「ルシフェル、ゲート残しておきたいんでしょう。なら、住人たちが誤って入っちゃわないように魔国側と同じようにしておこうね」
「わかった」
そして、ルシフェルは、魔力が高くないと魔国に行けないようにした。
魔力が基準に満たない者が誤って入ったとしても、魔国とは繋がらず、洞窟の最深部に行き着くだけになったらしい。
魔族と人族は敵対関係だったんだから、たまたま洞窟見つけて、魔力が高い人が魔国に来ちゃったりとかなかったのかな?
「ルシフェル。今まで魔力の多い人族が魔国に来て、争いになっちゃったとかないの?」
「あるぞ。勇者が来て、我らと争いになった」
「!!」
魔王がいるんだもん、当然、勇者もいるよね。
聞いたことなかったけどさ。
「その勇者は、どうなったの?」
「我の人族と友好関係を築きたいという話を聞いて、意気投合し、争うのをやめて我と共に先代魔王を倒してから魔国で暮らしているぞ。今もな」
「!!……それって勇者は、三百年以上生きているってこと?」
「そうだな。勇者は、アイリスと違い転生者ではないが、この世界に召喚された転移者らしく、アイリスには、及ばないがカイルより多くの魔力を持っているからな。チキュウのニホンという国から来たらしいぞ」
「!!」
何ですと!!勇者は転移者で日本人だとぉ~!!
「どうしたアイリス?」
「日本は、前世で暮らしていた国だよ」
「そうか。勇者と前世のアイリスは同郷ということだな」
「うん。そうなるね」
これは、魔国に行く楽しみが増えたよ。
色々、話聞いてみよう。
あれ?でも何で、勇者の伝承とかがスクラルド王国に残ってないんだろうか……
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