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第42話 勇者との対面
洞窟を抜けると空は厚い雲に覆われ、地上は森が広がっていた。
「冬なのに、まだ雪は降っていないのか。いつも通り曇りか」
「魔国はいつもこんな天気なの?」
「ああ、ほとんど曇りだな。雨季は毎日雨が降り、冬は、雪がよく積もる。晴れの日は、年に数回しかないな」
魔国で、作物が育ちにくいのは、魔素が多いだけでなく、晴れの日が少な過ぎるのと、雨季に毎日雨が降るみたいだから、雨の降り過ぎも原因だね。
「ルシフェル、作物が育つのには、十分な日の光が必要なんだよ。
あと、水は必要だけど、多過ぎても育たないんだよ」
「そうか。ここは、魔素多いだけでなく、作物が育ちにくい土地なんだな。
人族と友好関係が築けて、アイリスの町で暮らせるようになって、本当によかった。アイリスには、感謝することばかりだな。」
木漏れ日程度の日の光があれば、ちゃんと育つ作物もあるけど、日光が必要だからね。
雨が降り降り過ぎても根腐れおこすしね。
作物がよく育つには、雨が降り過ぎてもダメ、晴れの日が続き過ぎてもダメで、ホドホドが一番だからね。
雪か……見たかったな。この世界に来てから見ていないからね。
雪が降ったり、積もったりすると交通機関が乱れたり、凍結して歩きにくかったり、雪掻きが大変だったりしたし、寒いのは苦手だけど雪が降ると何かワクワクしたんだよ。
「過激派の残党に会う前に、勇者に会いに行くか」
「うん。行きたい」
そして、勇者の住んでいるという家に案内してもらった。
勇者の家は、ログハウスだった。
「ルシフェルだ。居るのだろう。開けてくれ」
ルシフェルが中にいるだろう勇者に声をかけると、扉が開き中から男性が出てきた。
「!!」
ええ、何で咲哉君がここにいるの!!
咲哉君が勇者なの?
「ルシフェル。人族と友好関係を築きに人族の国に行くと言って、魔国を出ていったのに幼女を拐ってきたのか?それはまずいぞ」
「違うぞ。アイリスは、我が世話になっている人間だ。
それに聖獣のフェンリルとフェニックスが一緒に居るだろうが、拐ってくるなら一緒に連れてくるわけなかろう」
「それもそうか。しかし、聖獣か。初めて見たぞ」
「我もそうだ。今は、アイリスの従魔らしいぞ」
「マジかよ。聖獣を従魔にするとか規格外過ぎるだろう」
「咲哉君……」
「アイリスちゃん、名乗ってもいないのに何で、僕の名前を知っているのかな?
扉が開き、中から出てきたのは咲哉君だった。
結婚するはずだった彼が何でいるんだろうか?
三百年以上生きているってどういうこと!!おかしくないか……
私は、ストーカー上司に殺され死んで、この世界に転生したけど、結婚して幸せになるばずだったのに、私が死に辛く悲しい思いをさせてしまったと思っていたのに。
二度と会えないと思っていたのに突然の再会で涙が出てきてしまった。
「サクヤ!!アイリスを泣かせるとは、許さんぞ」
「ええっと、違うぞ。僕は、アイリスちゃんに何で名前を知っているのか聞いただけじゃないか」
「違うのルシフェル。会えると思っていなかった人と突然再会したから、色々思うところがあって涙が出ちゃっただけだから」
「名前も知っていたようだが、アイリスは、サクヤのこと知っておるのか?サクヤはどうなのだ?」
「僕は、アイリスちゃんに会ったことあるわけないじゃないか。
魔国に来てから三百年以上経っているし、その間人族の国に戻ったことはないんだからさ」
「ということは、前世でってことだな。
アイリスは、転生者なのだ。サクヤ」
「僕みたいな召喚された転移者がいるのだから、転生者がいてもおかしくないな」
「うん。そうだよ。
咲哉君もルシフェルも驚くだろうけど、咲哉君は、前世で私が結婚するはずだった人だよ。
結婚する前に私は殺されて死んじゃったけどさ」
「「!!」」
「凜なのか!!」
「うん。この世界に転生して、アイリス・フォン・アリステラという名前の三歳児だけどね」
「殺されたって、どいうことなのかな?
僕は、凜が会社に寿退社すると伝えに行った日にこちらに転移したんだよ」
そうだったんだ。私が死んだ日に転移していたんだ。
辛い思いや悲しい思いをさせて、残してしまわなくてよかったけど……
今、殺されたと知らされて辛そうな顔をしているけどさ。
「えっとね。私、上司に寿退社を報告したら、その上司がストーカーで、帰り道に刺されちゃったんだよね。
痛かったけど、また咲也に会うこと出来たし、結果的にはよかったかな」
再会は、本当に嬉しかったので、できるだけ明るく言ってみた。
「上司がストーカーだったのか……
僕も凜を残して、この世界に来てしまったから、姿は違うけど、再会は嬉しいんだけど、自分が殺されたのを明るく言わないで欲しいな」
「ごめんないちゃい」
慌てて、噛んでしまった。
「そうか。サクヤは、前世のアイリスの婚約者であったのか。
カイルになんて説明したものか……」
私たちは、再会を喜んでいたが、ルシフェルは、カイル兄様にどう説明したらいいのかを悩んでいた。
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