第43話 過激派魔族の残党

1/1
211人が本棚に入れています
本棚に追加
/114ページ

第43話 過激派魔族の残党

 驚きと嬉しい再会があった私は、ルシフェル、スノー、グレンそれから勇者のサクヤも一緒に過激派魔族の残党がいる魔王城に向かった。 「サクヤの伝承とか残ってないの何でなんだろうね。  スクラルド王国が召喚したのにさ。後ろめたいことでもあるのかな……」  もしそうなら、後ろめたいからと隠蔽した王族の血が私にも流れている。 「あれじゃないか、僕が魔国に行き着いたのは、偶然だし、国に戻らず魔国に腰を据えちゃったからね。  僕が魔国に行ったことも、当時の魔王が倒されたことも知らないから、召喚した勇者は、急に居なくなって行方不明だし、魔族もなぜか攻めてこなくなったからとかで、なかっことにしたとかじゃないかな」 「国が隠蔽したとしても人の口は、すべて塞げないから、平民たちの間だけでも勇者の話が言い伝えられていもおかしくないと思うんだよね」 「ああ、平民たちは僕が召喚された勇者だって知らされてなかったからね。  知っていたのは、王族と一部の高位貴族だけだったんだよ」  そうなのか。それなら簡単に隠蔽できちゃうね。  これは今度、国王陛下に聞いてみる必要があるね。  王族では、言い伝えられている可能性もあるかもだしね。 「アイリスは、アリステラ公爵家に生まれたんたな。  僕が召喚されて、数年後にあの事件が起きたんだよな」 「そうなんだ。私は今、魔の森の近くにある公爵邸に住んでいるんだよ」 「あれ?事件のあとに公爵邸は、王都の近くに新しく建てたよね。何故、旧公爵邸に住んでいるの?」  何故、旧公爵邸に住んでいるのか聞かれたので、公爵家で疎まれていたことから、アリステラ公爵家をはじめとする一部の貴族が過激派魔族と手を組んで、計画が失敗して処罰され、魔族と一緒に結界に閉じ込められていることまで、これまでの出来事を私は、サクヤに説明した。 「なるほどね。アイリスも大変だったんだね」 「まあ、優しくしてくれた人たちも居たし、サクヤとも再会できたからいいかな。  そういえばサクヤは、何で魔国に来たの?」 「僕は、国の命令とかはなかったけど、事件のあと魔の森を誰にも言わずに一人で調べていてたんだ。そして、洞窟があったから入ってみたら、魔国に行き着いちゃったんだよね」  そんな話をしていると魔王城に到着した。 「さて、奴らと話しをしに行くか。全員が交渉に応じてくれると楽でいいのだがな」  魔王城はとてつもなく大きかったが、人の国の城と違い、警備のための門番はいなかったので、城の中に入っていく。 「門番とかいないんだね」 「魔族は、みんな魔王城に住んでいるからな。  サクヤ以外は、他種族が魔国に来たことがないから必要ないのだ」  確かに、城内に入ろうとする者に対応するために門番はいるんだもんね。  全魔族が、城内で暮らしているなら必要ないね。  まあ、我の後継の魔王が我を警戒して、門番を置きたかったかったとしても、我に賛同し、過激派以外の魔族は、みんな我に着いてきたから、人員が足りないのだろう」  ルシフェルの後に続き、城内を進み一際広い部屋に着くと、魔族が二十人ほどいた。  この魔族たちが過激派の残党だよね。 「ルシフェル!!貴様、何しに来た!!」 「そいつらは誰だ!!人間だよな!!」 「それにその魔獣はなんだ!!とてつもない魔力を感じるぞ!!」 「まあまあ、そう警戒するな」  自分たちと違う派閥の前魔王が、魔国に居るはずのない見知らぬ人間と聖獣を連れて来たのだから警戒するなって無理でしょう。 「言っておくが、魔王と側近たちは、人族に捕らえられたぞ」 『!!』  過激派の残党魔族たちは、こちらを怒りの表情で、睨んできた。  ルシフェルさんや交渉しに来たんだよね?  事実ではあるけど、いきなり怒らせたら、交渉せずに戦闘になってしまわないかい。 「ルシフェル!!いきなりそんな事を言ったら、交渉できないじゃんよ」 「そうか?まずは、現実を思い知らせてからと思ったのだがな」 「皆さんも怒りを抑えて、私たちの話を聞いてくださいな」 「人間ごときの話しなど聞く必要などない!!」 「ガルルル……」 「ボッォ」  魔族の発言を聞いて、スノーは、喉を鳴らして、グレンは、全身の炎を強くして威嚇した。 (スノーもグレンも落ち着こうね) ((アイリスが言うなら仕方ないね(ですね)))  スノーとグレンは、威嚇するのをやめた。  そして私は、無限収納からたくさん持ってきた野菜や果物を半分くらい取り出した。 「ドサドサドサ!!」 『!!』 「皆さんは、作物が魔国では育たないから、野菜や果物が欲しくて、人族の国を侵略しようとしていたのですよね。  これをあげますから、落ち着いて私たちの話を聞いてくださいな」 「たくさんあるが、全て本当にこれをくれるのか?」 「はい。どうぞ。良かったら好きなものを食べてみてください」  魔族たちは、それぞれ気になるものを食べ始めた。  野菜は生で食べれるものだけ、果物は切ったりせずに丸かじりや皮を剥けば食べれるものだけを出している。 『うまい!!』 「野菜とはこんなにも美味しいものなのか……」 「果物も美味しいですよ」 「野菜も果物も瑞々しい」 「美味しい物をありがとうございます。貴女たちの話をききましょう」  持ってきて、本当に正解だったね。  さっきまで怒っていたが、野菜や果物を食べて、あっさりと話を聞いてくれることになった。
/114ページ

最初のコメントを投稿しよう!