饒舌なオトシモノ

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 あれから1週間がたっていた。 「お母さん、道路、また大変なことになってるよ!」  つい今しがた送り出したはずの娘の声が、玄関先から聞こえてきた。幹子は慌てて外に飛び出すと、そこは惨状だった。  弁当やインスタント焼きそばの空きパック。  3割引のシールが貼られたお惣菜パックや冷凍食品のビニール袋。  安酒の空き缶。  口紅がべっとり付着した煙草の吸殻。  23点の数学の答案用紙。  10枚はくだらない馬券や宝くじの束。  カードローンの督促状。 「無着色明太子3コ」と印字されたアンテナショップのレシート。  夫の海外出張があるから気忙しいと嘆いていたにもかかわらず、出張前に旅行に出かけてしまったヒト名義のパート給与明細書。  どちらのオトコが使ったのかわからない匂いのキツイ白い紙の塊……。  またやられてしまったと思ったが、カラスも猫も悪くない。いけないのはルールをきちんと伝え切れなかった妻と適当に済ませようとした夫なのだ。  行き先がアメリカかどうかは知らないが、出張という事情が絡んでいるのだとしたら、絶対に夜に出すなとは言わない。  でも、そうせざるを得ない状況にあるのならば、せめて分別ルールをきちんと守ったうえで、カラス除けの網ぐらいかぶせていって欲しかったし、福岡に旅行中だという奥様にとっても、断然その方が都合がよかったに違いない。    正直かつ饒舌なオトシモノを片づけ終わった幹子の目には、そう遠くない将来に、博多明太子片手に意気揚々と近づいてくる女の仮面がくっきりと浮かんでいた。〈了〉
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