饒舌なオトシモノ

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 またやられてしまったと思ったが、カラスも猫も悪くない。いけないのはルールを守らない人間なのだ。  夜勤ということもあるだろうから、絶対に夜に出すなとは言わない。  でも、そうせざるを得ない状況にあるのならば、せめて分別ルールをきちんと守ったうえで、カラス()けの網ぐらいかぶせていって欲しい。  幹子(みきこ)はアスファルトのうえに散乱している卵の殻やパスタの残骸、はたまたインスタントラーメンのプラスティックカップやらビールの空き缶を前に、もはや呆れていた。幹子がこの地に引っ越して来てから1年と3ヶ月が過ぎたが、以前はゴミが荒らされることは滅多になかったのに、ここ最近、立て続けにこういった場面に遭遇していたからだ。  先月、一方通行の道路を挟んだはす向かいに、単身者向けの小さなアパートが完成したのだが、2週間ほど前からぽつぽつと人が住み始めていた。地域の基準によると、そのアパートには専用のゴミ置き場を設置する必要がないらしく、住人たちは幹子の家のすぐ目の前にあるゴミ置き場を使うことになった。  もちろん、きちんとルールを守ってくれさえすれば共用するのはかまわなかったが、管理会社が周知徹底していないのか、出し方がいい加減で、缶やペットボトルの日に燃えるゴミが出されていたり、分別もきちんとされていないことが続いていた。  そういったゴミは当然に回収されない。アパートの住人以外の人が、たまに収集日を勘違いしてしまうことや、分別を誤ってしまうこともあるのだが、そんなときには出した人間がそれを持ち帰って、しかるべき日に、あるいはきちんと分別して出し直す。  ところが、アパートに越してきた確信犯はそのまま放置するから、カラス除けの網を出しっぱなしにせざるを得なくなる。見栄えがよくないというのもあるが、不法投棄の標的にされる心配もある。  ゴミ置き場から離れたところに住んでいる人ならばそれほど気にもならないだろうが、ゴミ置き場に隣接している家にとっては不愉快極まりない話なのだ。  結局のところ、幹子のように直接的な被害者である間近の住民が後始末をする羽目になるのだ。
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