名もなき神々は売名を

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「ここが新しく担当になった神社です」 『神』に案内されてやってきたのは、山の奥深くにある小さな神社だった。鳥居は非常に簡素な作りで、本殿や拝殿も手抜きを疑うぐらい小さい。手水舎にいたっては設置されていないというありさまだ。 「新しくできたわりには人がおらんし、小さすぎると思うんじゃが。それに、ちょっと大きな地震が来たらあっさり崩れそうじゃ」 「やっぱりそう思いますよね。わたくしも驚きました。でも、ちゃんと仕事をしていれば人々はわたくしを敬って、立派な神社にしてくれると思ったのですが……」 「そもそも人がこない、と」 「はい……麓の村に住む男たちが作ったので、ここに神社があると周知されているはずですが、ひと月に一人願いに来てくれたら良い方です」 「な、なんじゃと!」  ひと月に一人という状況は聞いたことがない。生まれたばかりの頃に他の神々の仕事ぶりを見てきたが、一日に何百人もの人間を相手にしていた。ひと月でたった一人だなんて──前代未聞の事態と言っていいだろう。閑古鳥が鳴くどころの騒ぎではない。 「どうして誰も来ないのじゃ! 参拝者すらおらなんだとは思わなかったぞ!」 「理由はサッパリ……」 「これは距離を置こうとか考えている場合ではない。古株の神の知恵を借りるしかあるまい。我はいったん帰る。お主はここで待っておれ」 「は、はい!」
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