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数日後、『神』は古い神の知恵を借りると言った神様がなかなか帰ってこないので、神社を離れて神様に会いに行った。
「あの、どうなりましたか? わたくしは大丈夫なのでしょうか……」
「ああ……お主か……」
神様はすっかり悄然していた。
久方ぶりに見る『神』はますます薄くなっており、この分だと一ヶ月以内には完全に消滅してしまうだろう。
「告げぬのも酷じゃな……心して聞くが良い」
『神』をその場に座らせ、神様は古株の神々から聞いた事実を、淡々と伝えることにした。
「遥か昔から君臨している神々はこう言うた。「消滅しかかっている原因は、人々の信仰心が薄れているからだ。最近は無神論者が増えているから、数百年以内にほとんどの名もなき神は消え去るだろう。我々は名が売れているから問題ないがな」とな」
「そんな……! では、わたくしが薄くなっていっているのは……」
「信仰心が失われていっているからだな……。お主がまだ消滅していない理由は、少数の人間が存在を覚えていてくれているからじゃ。しかし、このままだといずれ覚えている人間がいなくなる。お主の前の担当地域の年齢層は如何ほどじゃった?」
「高齢者が多く、優しい人ばかりでした。子供は……数人いましたが、神社に立ち寄ることはあまりなく、成長したら上京してしまいました。きっと彼らはわたくしのことを覚えていないでしょう」
「では、その老人たちが最後の砦だな。新しく担当になったあの神社は人が来ないから期待できんが、それでも役目を投げ出して戻ることは不可能じゃ。なんとか人を呼び寄せて、信仰心を生み出すしかお主が助かる道はない」
「あの神社で、人を……そんな、そんなの無理ですよ……」
『神』は顔を青くして「いったい、どうすれば……」と、迷子の子供のように神様を見上げた。
「我は自分の担当神社のことで精一杯じゃ。このまま放っていたら我も危うい。神社に足を運ぶ人間が減ってきているからなぁ。お主も、頑張るのじゃ。見たところ一ヶ月は大丈夫だと思う。完全に消滅する前に足掻くが良い」
「助けては……」
「そんなことをしてる暇はないから無理じゃ。ほら、願いは叶えてやっただろう。原因が分かって良かったじゃないか」
神様は「健闘を祈る」と言って、さらなる信仰を生み出すべく担当神社へ行ってしまった。
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