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エピローグ:未来の遺産
パッセンジャー号母機は予定通りGJ1214のヘリオポーズから50天文単位の空域でキングストン弁を開栓。バザードラムスクープエンジンをスタンピード運転させて自爆した。
その膨大は輻射エネルギーから様々な新発見が明るみに出た。高出力エネルギーの制御技術は深宇宙通信工学からナノ電子工学まで産業革命を巻き起こした。同時に量子ペアの安価で安定した大量生産技術をもたらした。
リィンの願い通りパッセンジャー号の全データはシャルボノヴァ――パッセンジャー号の自爆から生じた超新星爆発級の輻射だ――のエネルギーを消費してプランクトンの雲に記録された。
その閃光はすさまじく絞り込んだレーザーが例の契約農場の片隅をうがった。
そこに三つの信号がエンコードされている。
リィン本人、小百合、そして私だ。
祖母と孫娘のクローンボディはまもなく自我と記憶を受け取る。そして目覚めるだろう。
シャルボノーと地球。
二つの文明圏で交流が始まる。互いの星は光速船に量子ペアの片割れを積んで輸出する。それを用いてリアルタイムのコミュニケーションが通信インフラを刷新するだろう。シャルボノベーションだ。
不死鳥は自らを焼き灰の中から飛翔する。そして母なる海で身を冷やすという。
リィンは不死鳥をひっさげて舞い戻ってきたのだ。
――リィン・シュバルツァー・フェニックス財団。
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