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第一話 こんにちはスーパーヒーロー
むかしあこがれた。
テレビの前のスーパーヒーロー。
悪を蹴散らし、弱気を守るその正義の心に、幼い頃心を躍らせた。
そして夢見た。
いつか、自分も誰かのヒーローになれるだろうか。
誰かを守りぬくことができるだろうか。
いつしか大人になって、俺は、その夢を幻想とあざ笑ったんだ。
こんにちはスーパーヒーロー
「うーっ」
授業終わりの開放感に、わたしは大きく伸びをする。いつもと変わらない高校生活の一日が流れるように過ぎ去っていく。
「智沙子、じゃあね!」
「ん、バイバイ」
部活動や委員会活動に向かうクラスメイトたちに手を振って、そういったたぐいの青春に縁のないわたしはさっさと帰宅の準備をすませていく。
スポーツや文化部の活動に一心を捧ぐ。そんな学生生活もあこがれではあったのだけれど。あいにく特出した才能を持たない平凡きわまりないわたしには、この帰宅部生活が身に合っている。
部活動をしていなくたって、楽しい生活は送れるのだ。
スマートフォンの通知がなる。
どきり、表示された名前にほんの少し心臓が音を立て、急いで文面を確認。そして落胆。
「あの馬鹿……」
――誘ってきたのはあいつのくせに。
メールに書かれた『ゴメン』の文字。落胆は次第に怒りに変換され、わたしは返信もせずに携帯を鞄にぶち込んだ。
メールの相手は長谷淳平。
わたし、井上智沙子の幼なじみだ。親同士の仲が良く、家も隣。幼稚園から現在まで通う学校もすべて同じ。そんな腐れ縁。
そして、何を隠そう。井上智沙子は長谷淳平が好きだった。
恥ずかしいので多くは語らないが、高校入学後、ただの幼なじみだったあいつはわたしにとってそれ以上の存在になってしまった。
もちろん、そんなことは本人に口が裂けても言えないので、わたしはその想いをひた隠し、なんとか普段通りの振る舞いを心がけて毎日をやり過ごしているのである。
そんなことより、現在のこの状況だ。非常にむかつく。大変むかつく。楽しみにしていた純粋なわたしの気持ちを返して欲しい。
簡単に言えばドタキャンだ。あの野郎はわたしとの予定を直前でキャンセルしやがったのだ。急用がなんだか知らないが、とっても楽しみにしていたのに。許せない。
――もう知らん!
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