セプテンバー症候群

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セプテンバー症候群

また君を探している。 最寄駅のロータリーのベンチで、飲めもしない缶コーヒーで手を温める姿を。 白いソファーに横になり、腰掛ける僕の足に頭を乗せて携帯を触る頭を。 僕に合わせてネットショッピングで買った、色違いのスニーカーを。 鍋の焦げを取りきれず、SOSを発する、僕を呼ぶ声を。 僕より遅く起きる日の、僕のアラームをいち早く消す指を。 2口吸ったら飽きてもういいと言う、5mmのメンソールのタバコを。 昨晩見た夢の話を意気揚々と話すその手の甲を。 短く切った髪から覗く、今となってはなんとも思わない頸を。 どうせすぐに忘れると思っていた。 ブランケットに潜らせた、冷え性なその足を。 プレゼントには大したことのないと言って、笑っていた大画面のTVを。 僕に比べて形が歪で、サイズもバラバラな服のたたみ方を。 味の薄い料理や、浄水器を通さないと飲めないと言った水も。 実演して見せてくれた、正しい歯の磨き方を。 どこから仕入れてきたのかわからない、聞きたくない風の噂を。 好きという、たった2文字の言葉を。 まだ君を探している。
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