罪人の恋

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 杏菜は新しいパートナーと手をつなぎ、散歩に出かけたようだ。  天から落ちる優しい光が、その夫婦を照らしていた。  杏菜の背中を見届けると、亮太は配送車に乗り込んだ。  カバンの中から、高校時代の卒業アルバムを取り出した。革の表紙はだいぶ擦りきれている。青春の重みが、手の平に沈んだ。  目的のページを開いた。  まだ化粧気もなく、セーラー服を着ている杏菜の顔を見つめる。 ――おはよう、亮太くん。 杏菜の声が蘇った。 友達のいなかった亮太に、唯一声をかけてくれる人だった。彼女の存在だけが、学生時代を生きる上での支えだった。 「お元気で。溝倉杏菜さん……」  人生を懸けて愛した女性の名を呼ぶと、亮太はゆっくりとアルバムを閉じた。  パタンと閉じたその音とともに、彼の恋はようやく幕を閉じた。  幸せな恋だった。今ならそう言える。 ~完~
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