罪人の恋

10/22
前へ
/22ページ
次へ
 捜査本部の講堂には百人以上の捜査員が集まっていた。  都県をまたいだ連続強盗殺人事件に発展したため、合同捜査本部へと形を変えた。  あれから、さらにもう二件が発生していたのだ。 「これで六件目か……くそったれ」  捜査会議が終わると、矢岡は乱暴につぶやいた。 「東京の新小岩、小岩から、千葉の市川へと続いてますね。犯人はこの辺りに土地勘のある人物でしょうか」  亮太は捜査資料に目を落としながらいった。 「おそらくな」  矢岡は腕を組み、天井にあごを向ける。 「ただ、どうしても沖野洋祐の件だけは引っ掛かる」 「どっ……どうして……それにこだわるんです」  亮太は息が乱れそうになるのをぐっと抑えた。 「他のガイシャ(被害者)は皆、六十代以上の高齢者だ。しかし、沖野洋祐はまだ29歳。何かおかしい」  矢岡の双眼が亮太に向けられた。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

92人が本棚に入れています
本棚に追加