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「だから、取引とは何だ!」
亮太は思わず声を荒げる。
「そう慌てんなよ。こっからが面白れーんだからよ」
すきっ歯になっている前歯を舌で舐めてから沼井は続ける。
「オレはあの女にカマをかけたんだ。夫を殺したのはお前だろうって。そしたらあの女、五分もしないうちに白状したよ。誰にも言わないでって泣きだしやがった。ハハハ……」
「……キサマ」
「で、オレは提案したんだ。夫の殺害はオレがやったことにしてもいい。その代わり……」
「その代わり……なんだよ」
嫌な予感が亮太の全身を痙攣させていく。
「体を要求したんだ」
「……」
「そして杏菜は、それに応じた」
「杏菜ちゃんが……」
心臓がよじれる。激痛が喉をかきむしった。
「青い下着がよく似合ってたぜ。ヘヘヘ。いい体してたわ。あんないい女そうそう抱けねーぞ。オレさ、もういつ死んでもいいやって思ったよ。まあ、今まさに死刑になるんだけどな。ハハハハ」
亮太は頭の中が真っ白になっていく。
突如、腹の底から込み上げるものがあっだ。
「ううっ……おう……」
気づけば、その場で胃の中のものをすべて吐いていた。
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