罪人の恋

18/22
前へ
/22ページ
次へ
「どうしたの亮太くん。顔色悪いよ」  ビーフシチューをかきまぜる手を止めて、杏菜はキッチンからリビングへやって来た。 「少し、疲れてるだけだ」  亮太は椅子に座ったまま言った。 「ごめんね。亮太くんにはたくさん迷惑かけたもんね。これからはわたしが支えるから」  杏菜は亮太の元へ近寄ると、彼を背後から抱きしめた。  しかし―― 「離せっ!!」  亮太はその両腕を振り払った。 「……えっ。どうしたの」  杏菜は怯えるように立ち尽くした。 「ごめんな。本当にごめん。オレが受け止めるだけの器がないんだ」 「何かあったの?」 「杏菜……」 杏菜、杏菜――亮太は鼻息を荒げた。  情緒がおかしくなっていた。  杏菜の手首をつかみベッドに連れていった。押し倒し、彼女の唇を奪い、体を求めようとした。 ――が。 「うわあああぁぁぁあああああ」  亮太は頭を押さえ、髪の毛をくしゃくしゃにした。 「ねえ、亮太くん、亮太くんってば。どうしたのよ」  体が杏菜を拒絶した。  亮太は崩れ落ちると、嗚咽(おえつ)するように泣き続けた。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

92人が本棚に入れています
本棚に追加