罪人の恋

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卒業アルバムを脇に抱えたまま、亮太はスマートフォンを手に取った。 「はい、もしも……」 「ねえ、亮太くんだよね」  亮太が言いきる前に、女の声が(さえぎ)ってきた。 「あの、失礼ですがどちらさま」 「わたしよ、わたし。溝倉(みぞくら) 杏菜(あんな)よ」 心臓が跳ねた。同じ高校に通っていた杏菜からの電話だった。大学も同じだった彼女。今はもう結婚して、沖野(おきの)という苗字だ。 数年ぶりに声を聞く。 それがなぜ今……。 「杏菜……杏菜ちゃんなのか。番号が違うから気づかなかったよ。久々だね、元気にして」 「ごめん亮太くん。それどころじゃないの」 杏菜は緊迫した様子だった。 「どうしたの、落ち着いて」 受話器の向こうからは、冷静さを欠いた杏菜の吐息が聞こえてくる。 「あのね……」 「うん」 「亮太くんだから話すんだけど……」 「……」 ――オレだから? 亮太はごくりと息を飲んだ。 「殺しちゃった」 「えっ」 「今ね、夫を殺しちゃったの」 ドサッ―― 亮太は卒業アルバムを脇から落としていた。
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